「赤字1億円超…」 秋田のローカル線が続ける鉄印戦略――売上の2割を稼ぐ“もう一つの収益源”とは

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秋田の由利高原鉄道が進める鉄印販売は、売上6242万円のうち商品販売が1243万円と2割を占める一方、赤字補填は補助金頼みの構図だ。通学定期半額化など独自策で利用増を狙う現場の実像を追う。

粗利率5割を超える物販事業の存在感

由利高原鉄道鳥海さんろく線の終点・矢島駅(写真:写真AC)
由利高原鉄道鳥海さんろく線の終点・矢島駅(写真:写真AC)

 ただ、気になったのは、損益計算書の支出が前述のとおり「売上原価」として記されている点である。これは、商品を仕入れて売ることを前提とした、卸や小売の書き方だ。商品販売収入は

「売上全体の2割」

ほどにとどまるが、本業の鉄道と並ぶ柱として見ているとも受け取れる。

 同社が公表している同期の運営状況の概要によると、商品販売収入の1243万円は「非常に良い結果を得ることが出来た」とされている。主力だった既存のレトルトカレーが製造中止となり、新たな商品を急いで用意する事態となったが、菓子類の売上が減収分を補った。ウェブショップでもそばなどの既存商品が好調で、これに加え、使い終えた鉄道用品の販売や、鉄印に関わる売上も支えとなったとしている。

 なお、商品販売収入1243万円のうち、仕入れにあたる売上原価は586万円で、単純に見れば粗利は657万円、粗利率は53%となる。もちろん、売上原価のほかにも販売にともなう費用がかかるため、粗利がそのまま利益になるわけではない。だが、全体の売上が6000万円規模で大きな赤字を抱える企業にとって、600万円を超える粗利を生む事業は軽く見られない。

 これが第三セクターではなく民間の私鉄であれば、もともと副業だった事業が本業の鉄道を大きく支える例は珍しくない。千葉県のローカル私鉄である銚子電気鉄道が、実質的に菓子の製造を主とする会社になっている例はよく知られている。

 一方で、自治体が大株主となる第三セクターは、公費が入る以上、鉄道以外の事業には慎重にならざるを得ない。そのなかで由利高原鉄道は、全体として大きな赤字が続いているものの、売上の2割を商品販売が占めており、他の第三セクター鉄道と比べても踏み込んだ取り組みといえる。

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