ベンツ・レクサスを凌ぐ「残価7割」――役員車の主役を奪った“走る資産”の正体

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VIP送迎の主役はセダンからアルファードへ移行。2025年販売は8万6959台、3年残価率60~70%と高級セダンの40~50%を上回り、法人車の評価軸は外観から車内価値と資産性へと移り変わっている。

高級車ヒエラルキーの崩壊と実利への転換

自動車(画像:写真AC)
自動車(画像:写真AC)

 VIP送迎の主役は、すでにセダンではなくなった。企業の役員車やハイヤーが走る現場を見れば、アルファードが実力で標準車の座を占めているのは明らかだ。この変化は、一時的な流行や個人の好みで片付けられる話ではない。年間8万台を超える販売規模や、室内長3005mm超という空間のゆとり、そして手放す際の値落ちの少なさが、かつての高級車が築いてきた序列を足元から変えてしまった。

 こうした優位は、具体的な数字にもはっきりと表れている。2025年のアルファード販売台数は8万6959台に達し、前年比で109.6%という勢いを見せた。兄弟車であるヴェルファイアの3万3031台を合わせれば、高級ミニバンという存在はもはや市場の主流だ。一方で、かつての象徴だったクラウンは5万6717台にとどまる。日本市場全体を見渡しても、セダンの構成比は約6%にまで縮小してしまった。

 振り返れば、これまでの役員車は「黒塗りのセダン」であることが当たり前だった。クラウンやレクサスLSのような車は、外の世界へ向けて威厳を放つ役割を背負わされていたからだ。しかし今の法人送迎で厳しく問われるのは、外から見た美しさではない。乗る人がいかに効率よく動き、車内でいかに心地よく過ごせるか。そして、使い終えた後にどれほどの資産価値が残るかという実利の部分である。

 こうした評価のものさしが浸透したことで、低い座面と限られた天井高しか持たないセダンは、構造的な不利を隠せなくなった。アルファードが奪ったのは、目に見えるシェアだけにとどまらない。VIPが車を選ぶ際の基準そのものを、外からの見栄えから、なかでの過ごしやすさへと移し替えてしまったのだ。企業の移動に対する考え方が、体面を重んじる古くからの文化を離れ、より実利を求める方向へ移り変わったことが、この数字の背景にある。

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