ベンツ・レクサスを凌ぐ「残価7割」――役員車の主役を奪った“走る資産”の正体
VIP送迎の主役はセダンからアルファードへ移行。2025年販売は8万6959台、3年残価率60~70%と高級セダンの40~50%を上回り、法人車の評価軸は外観から車内価値と資産性へと移り変わっている。
セダンを凌駕する「垂直のゆとり」と滞在品質

アルファードが選ばれる理由は、何よりもまず物理的な広さにある。室内高が1360mm前後に達するこの空間は、セダンがどうしてもたどり着けない領域だ。もちろん、高級セダンには走りの安定感や重厚な見栄えがある。けれど、後席に身を置く人にとっては、足を伸ばせるか、頭上に十分な空きがあるか、あるいは腰を深く沈めずに乗り降りできるか。そうした実利に近い部分こそが、切実な価値として立ち上がってくる。
移動の合間に資料を読み込み、電話で指示を飛ばし、時には短い眠りにつく。こうした使い方をする人にとって、車内は業務を支える効率的な場そのものだ。独立した二列目のシートにしても、単に乗員を運ぶための椅子ではないだろう。そこで過ごす時間の質を高めるために置かれている。車への評価軸が走りの性能から滞在の性能へと移り変わる中で、ミニバンの形そのものが大きな強みとなったわけだ。
乗り降りのしやすさも見逃せない。スライドドアのおかげで、横幅が限られた場所でも入り口を大きく開け放つことができる。利用者は体を深く折り曲げることなく、自然に室内へと足を踏み入れられる。高齢の役員や和装の人、あるいは大きな荷物をともなう空港への送り迎えなど、現場での差は小さくない。外から眺めたときの格好良さよりも、中で得られる実益を重んじる。この選択は、今の時代における極めて合理的な答えではないだろうか。