ベンツ・レクサスを凌ぐ「残価7割」――役員車の主役を奪った“走る資産”の正体

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VIP送迎の主役はセダンからアルファードへ移行。2025年販売は8万6959台、3年残価率60~70%と高級セダンの40~50%を上回り、法人車の評価軸は外観から車内価値と資産性へと移り変わっている。

アジア依存の危うさとEVシフトの逆風

アルファードのイメージ(画像:トヨタ自動車)
アルファードのイメージ(画像:トヨタ自動車)

 アルファードの優位が、この先もずっと続くとは限らない。今の勢いは、アジア圏で豪華なミニバンを求める声が極めて強いという状況に寄りかかっているからだ。もしこの土台が崩れれば、これまで大きな魅力だった値落ちの少なさも保証されなくなるだろう。

 欧米の高級車市場に目を向ければ、今もセダンや大型スポーツタイプ多目的車(SUV)が主流である事実に変わりはない。メルセデス・マイバッハやレンジローバーといった車が、力や富を象徴する存在として選ばれ続けている。ミニバンが高級車の頂点に立つという現象は、世界共通の標準というより、アジアの価値観に深く結びついたものといえる。

 車の作りそのものにも弱点はある。ミニバンは背が高く、どうしても重くなる。これは空気の抵抗を受ける面で不利に働き、電動化が進むほど航続距離の問題として表に出てくるはずだ。広い室内を守ろうとするほど、走りの効率を高めることが難しくなるという矛盾を抱えているわけだ。

 さらに、周りの動きも激しさを増している。比亜迪(BYD)やジーカーといった中国の作り手は、ジーカー009のような高級電気自動車(EV)ミニバンを次々と送り出してきた。このジーカー009は、最大航続距離822kmという性能を掲げ、車内のデジタル機能を前面に押し出している。アジアの富裕層がこうした最新のEVへと関心を移せば、アルファードの中古価格を支えてきた仕組みも壊れる恐れがある。

 今の成功は、アジアの需要や輸出の環境、そして燃料車からEVへの移り変わりという条件が重なって生まれた。その意味で、今の力関係は不動のものではない。常に環境の変化にさらされ続ける、危うい均衡の上に成り立っているのだ。

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