「ライバルの車を、徹底的にバラせ」──トヨタが英国で始動した循環型ファクトリー、エネルギー95%削減が突きつける“売り切り型”からの転換

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トヨタが英国で始動した循環型工場TCFは、廃車アルミ回収で新車へ再投入。再生でエネルギー95%削減し、製造業の収益源転換を示す動きが広がるトヨタ生産方式を解体工程へ広げる狙いも浮かぶ欧州展開も視野に。

循環型生産の課題顕在化

循環のイメージ(画像:Pexels)
循環のイメージ(画像:Pexels)

 現場が新たな段階に進んだことで、これまで見過ごされてきた課題が形をともなって見えてきた。それは、製品開発そのものに「循環」の視点をどう組み込むかという問いだ。循環型ファクトリーの現場から届く知見は、今の車がいかに壊しにくい構造であるかという厳しい実態を突きつけている。走りの質や軽さを追い求めた結果、異なる素材の複雑な組み合わせや強力な接着技術が多用され、それが解体作業の足を引っ張っているのだ。

 トヨタはこうした現実を前に、開発のあり方を変えようとしている。壊しやすい構造への工夫や素材の統一といった、いわば「逆算の設計」が必要だという認識だ。燃費やパワーといったこれまでの物差しに加えて、資源をどれだけ戻しやすいかという評価軸が、車づくりの現場に持ち込まれようとしている。接合の仕方を一から見直し、使い終わった後の価値まで見据えて部品を企画する。メーカーが製品の「死」まで責任を持つ、そんな姿勢が透けて見える。

 ここで重要なのは、素材を再利用することではない。現場の泥臭い情報が開発の最前線へと還り、次の車づくりを動かし始めているという流れそのものにある。

 英国バーナストンの拠点は、作業の進め方を整え、素材を抜き出す手法を固め、さらには供給網が成り立つかを確かめる重責を担っている。この成果を携え、トヨタはポーランドに次なる拠点を設ける方針を打ち出した。これは処理する台数を増やすための拡張ではない。どんな場所でも通用する共通のやり方を作り上げるための布石だ。環境規制で先を行く欧州連合(EU)の動向を睨みつつ、その先にある世界展開までを視野に入れている。

 もちろん、廃車の量も規制の内容も、地域ごとに事情は異なる。今後は、この仕組みがビジネスとして自立できるかどうかが焦点になるだろう。特定の型を無理に押し付けるのではなく、現地の条件に寄り添いながら、資源の流れを自分たちで管理できる体制を築けるか。外部の資源に頼り切らない、しなやかな事業運営への挑戦が続いている。

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