モペット経済の闇――なぜ「ルールを守る者」が損をして、「売り逃げる者」が笑うのか?
販売段階の責任明確化

街頭での取り締まりを徹底することは、違法モペット問題の解消に欠かせない一歩だ。しかし、現場の利用者を摘発するだけでは、蛇口を閉めずに溢れた水を拭い続けるようなものだろう。供給側が無責任に車両を流し続ける限り、違反の連鎖は止まらない。個別の違反を後から追いかける手法には、すでに行き止まりが見えている。
いま求められているのは、販売段階での責任を法的に明確にすることだ。違反車両が市場に出回ること自体を難しくする、より手前の守りが必要なのである。
とりわけ、自転車や特定小型原付と混同されやすい車両を扱う場合、販売側には厳格な表示義務を課すべきではないか。車両の区分、必要な免許、自賠責保険やナンバー取得の要否、そして保安基準への適合状況。これらを買い手がひと目で理解できる仕組みが不可欠だ。あわせて、性能確認済みの表示があるかどうかも、通販サイト上で容易に判別できるようにしなければならない。
さらに、通販サイトの基盤を運営するプラットフォーマー側の役割も重い。不適切な表示を繰り返す販売者や、確認済み表示のない不透明な車両を自動的に排除する仕組みの導入が急務といえる。
この混迷は、新しい乗り物への理解不足だけで起きているわけではない。安全に必要なコストを惜しむ利用者と、その心理につけ込んで利益を掠め取る流通側が結びついた結果、生み出されたものだ。
問われるべきは、利用者の心がけもさることながら、違反状態の車両が売れ続けることで潤う市場の構造そのものだろう。安全のための負担を実直に引き受けるメーカーが不利になり、責任を逃れる側が得をする現状は、あまりに公平さを欠いている。
交通の安全を真に守るためには、責任を負わない販売側が利益を得続ける歪んだ仕組みを改めなければならない。法を守る側が正当に扱われる、当たり前の市場へと作り変えていく時期に来ている。