モペット経済の闇――なぜ「ルールを守る者」が損をして、「売り逃げる者」が笑うのか?

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見た目は自転車、中身は原付のモペットが街に拡大。警視庁では検挙2538件(2024年)、25年上半期も1151件と高水準が続く。事故も増え、制度と流通の隙間が問われている。安全コストを巡る市場の歪みが浮き彫りになっている。

LUUPとモペットの制度差

特定小型原付のイメージ(画像:写真AC)
特定小型原付のイメージ(画像:写真AC)

 街中で見かける機会が増えた電動キックボードや、ペダル付きの電動バイク。一見すれば同じ「新しい乗り物」に見えるかもしれないが、法的な立ち位置には、埋めがたい深い溝がある。

 昨今、LUUPなどのサービスで知られる「特定小型原動機付自転車」は、16歳以上であれば免許なしで利用できる道が開かれた。ただし、これには厳格な条件がある。最高速度20km/h以下、定格出力0.60kW以下、車体のサイズも長さ190cm・幅60cm以下に収まっていなければならない。

 対して、モーターの力で自走できるモペットは、法的には「一般原動機付自転車」そのものだ。免許の携帯はもちろん、ナンバープレートの取得、自賠責保険への加入、ヘルメットの着用が必須となる。さらに、ミラーやウインカーといった保安基準を満たす装備がなければ、公道を走る資格すらない。改正道路交通法では、たとえモーターを切ってペダルだけで進んでいたとしても、それは原付の運転と見なされることが明確に示された。ペダルが付いているから自転車だ、といういい逃れはもはや通用しないのだ。

 厄介なのは、この違いをあえてあいまいにしようとする空気感だ。特定小型原付が持つ手軽なイメージを隠れ蓑にし、本来はより厳しい規制を受けるべきモペットを同じ土俵で扱おうとする。そこには、守るべき義務から目を背けようとする、歪んだ意図が透けて見える。

 万が一、事故が起きた際の責任はあまりに重い。自賠責保険の支払上限は、傷害で120万円、死亡で3000万円、後遺障害に至れば最大で4000万円に及ぶ。モペットとは、これほど大きな被害を生み出し得る乗り物として位置づけられている。それにもかかわらず無保険で走れば、被害者の救済が滞るだけでなく、加害者もまた、

「一生を棒に振りかねない賠償」

を背負うことになるだろう。過去には、自転車事故であっても9000万円を超える賠償を命じられた例がある。自転車よりも強い動力を持つ車両を、無免許・無保険で走らせるリスクは、決して軽視できるものではない。

 これは新しいルールへの理解不足といった言葉で片付けられる問題ではない。社会が安全を担保するために築いてきた仕組みに、無賃乗車する行為。それを、責任ある大人の振る舞いと呼ぶことはできない。

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