「信頼」と「美意識」の再構築――感性で世界を制す日本車再興の終着点【連載】Make Japanese Cars Great Again(9)

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EV・SDV化が進みHV・PHV・EVが混在するなか、日本車は信頼と美を軸に価格競争を避け、世界市場での販売と横連携への体制転換を進められるかが問われる。EVは300万円超が多く普及途上にある。

自己表現力の不足と転換点

日本車復活への戦略。
日本車復活への戦略。

 マーケティング戦略は、日本の自動車メーカーが長く苦手としてきた分野であり、ここを乗り越える必要がある。これまでを振り返ると、走りの性能や機能の説明が前に出すぎる傾向があった。その背景には、日本メーカーの慎重な姿勢がある。落ち着いた表現が多く、製品の見せ方や価値の伝え方がうまいとはいいがたかった。自己表現が得意ではない日本人の気質も影響しているかもしれない。

 しかし、世界で日本車を売っていくためには、自己表現こそが今後の土台になる。それは、日本車が持つ世界観であり、日本車とともにある暮らしの姿であり、使うなかで生まれる感覚そのものである。数値や性能を前面に出すものとは異なり、はっきり言葉にしにくい部分も多いが、消費者と共有できなければ販売にはつながらない。

 これからの主な購入層は、スマートフォンとSNSのある環境で育った世代であり、いわゆるデジタル世代である。これは日本だけでなく世界共通の流れだ。日本の自動車メーカーは売り方を学ぶためにも、まず今あるHVを世界各地で積極的に展開すべきである。

 HVは、走行時にEVより二酸化炭素の排出があるだけで、技術的に劣っているわけではない。しかもEVは、まだ入門モデルでも300万円を超える価格帯が多く、充電の環境も十分とはいえない。

 であれば、HVをEVの入口として位置付け、世界市場で広く販売しながら、売り方や伝え方の経験を積み重ねていけばよい。もちろん、HVが市場に根づき、利益を生むのであればそれに越したことはない。最終的な競争の中心は将来のEVとソフトウェア中心の車である。今のうちに日本車に触れてもらい、体験してもらいながら売り方を学ぶことが重要になる。

 100年に一度ともいわれる変化の時期にあり、自動車メーカーのかじ取りは一段と難しくなっている。しかし日本車には、長年積み上げてきた技術と信頼がある。一方で、これから重要になる変化への対応や新しい見せ方、自分たちの強みを伝える力は、日本の自動車メーカーが必ずしも得意としてこなかった領域である。

 この壁を越えた先に、「Make Japanese Cars Great Again」があるだろう――。

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