「消費者は急がなかっただけだ」――EVシフト前提はどこで崩れたのか? 世界で半数がエンジン車を選んだ25年市場の転換点

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2025年、世界の車購入検討者の半数が次の選択肢としてエンジン車を挙げた(前年比13ポイント増)。EV意向は10ポイント低下。EY調査が示すのは後退ではなく、充電環境や価格、残価不安を前にした現実的な選別の進行である。

航続距離と心理的不安

自動車(画像:Pexels)
自動車(画像:Pexels)

 購入をためらう理由として繰り返し挙がるのは、走れる距離への不安、充電にかかる時間の長さ、そして価格の高さである。これらは数年前から変わらず上位に並び続けている。

 走行距離の問題は、日常の使い方であれば支障がない場合も多い。ただ、急な予定や遠出を思い浮かべたとき、その不安は実際以上に重くのしかかる。

 充電時間も同様だ。数分で終わる給油に比べ、充電器の前で30分以上を過ごすことは、日々の時間感覚そのものを変えてしまう。

 さらに、車両価格の高さに加え、維持費全体で見たときの負担も軽くはない。電気代の上昇や保険料の割高感が、燃料費の節約分を相殺してしまう場面もある。

 加えて、新しい技術が次々に出てくるなかで、高い費用を払っても短期間で旧型と見なされる可能性が残る。人々は損得を冷静に見て、条件が整うまで待つほうが合理的だと考えている。

 日本市場が長く選んできた道は、こうした世界の動きと重なる部分がある。ハイブリッド車(HV)を中心に据えた判断は、先が見えにくい状況での備えとして働いてきた。

 充電環境が十分に整うまで待つという選び方を、市場全体が自然に受け入れてきたともいえる。

 日産自動車は2010(平成22)年にリーフを量産し、急速充電の規格づくりにも早くから関わってきた。仕組みの土台づくりという面で果たした役割は小さくない。

 一方で日本では、集合住宅が多く自宅充電が難しい住まいの事情や、日常の走行距離が短いという実態が、普及の速度を抑えてきた。

 その結果、大きな投資が無駄になる事態は避けられ、既存の仕組みを使いながら環境負荷を減らす流れが続いてきた。

 HVの見直しが世界で進んでいる背景には、急な変化で生じる負担を避け、現実的な費用で移行を進める考え方が広がっていることがある。

 無理のない段階的な移り方は、資産を守りながら日々の使い勝手も維持する、堅実な選択として受け止められてきた。

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