「消費者は急がなかっただけだ」――EVシフト前提はどこで崩れたのか? 世界で半数がエンジン車を選んだ25年市場の転換点

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2025年、世界の車購入検討者の半数が次の選択肢としてエンジン車を挙げた(前年比13ポイント増)。EV意向は10ポイント低下。EY調査が示すのは後退ではなく、充電環境や価格、残価不安を前にした現実的な選別の進行である。

エンジン車回帰の実態

自動車(画像:Pexels)
自動車(画像:Pexels)

 2025年、世界で車の購入を考える人の半数が、次に選ぶ車としてエンジン車を挙げた。前年から13ポイントの上昇である。

 一方で、EVを選ぶ意向は10ポイント下がった。会計系コンサル「ビッグ4」のひとつEYが32市場、約2万1000人を対象に行った調査の結果だ。

 この数字は、流行の終わりを示すものとはいい切れない。むしろ購入者が見ているのは車両価格そのものにとどまらず、数年後の売却時にどの程度の値が付くのか読みにくい点や、高い金利のもとで続く支払い負担である。

 加えて、技術の進みが速い領域であるがゆえに、購入直後に旧型と見なされる可能性も小さくない。充電環境の不足、価格の高さ、長距離移動への不安といった条件が整わないかぎり、不確かな支出を避ける判断はむしろ自然だろう。

 消費者は、自らの資産を守るためにより確かな選択へと傾いているともいえる。急いで動かなかったというより、当初から慎重に見極めていた側面がある。「EVシフト待ったなし」と語られ続けた数年の間も、その姿勢は大きく揺らいでいない。

 エンジン車を選ぶ意向の高まりは、米州、欧州、アジア太平洋のいずれの地域でも確認されている。国や文化の違いを越えて同じ方向に数字が動いたことは、一定の重みを持つ。

 ただし中国は例外に近い。充電網の整備が進み、価格も下がっている市場では、EVを選ぶ割合が他地域とは異なる水準にある。広がり方の差は、意識の違いというよりも、環境条件の差として捉えたほうが分かりやすい。

 さらに、国際関係の緊張も選択に影を落としている。関税の引き上げや補助金の見直しといった政策の揺れは、将来の負担を見えにくくする要因になっている。

 欧州などでエンジン車の販売停止方針が緩められたことも、急いで高額な車を買う動機を弱めた。人々は政治や景気の動きを静かに見極めながら、損失の少ない選択へと寄っている。

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