「どう見ても小型ヘリです」それでも“空飛ぶクルマ”と呼ぶのか?――2027年商用化を前に過熱する名称論争と産業戦略の思惑

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2027年から2028年にも有料運航が始まる「空飛ぶクルマ」。大阪―関空を10~15分で結ぶ期待の一方、「クルマか航空機か」で議論は分裂する。名称の違和感の裏にあるのは、技術ではなく移動の捉え方の変化だ。普及か限定的利用か、その分かれ目が見え始めている。

移動の呼称をめぐる違和感

空飛ぶクルマのイメージ(画像:SkyDrive)
空飛ぶクルマのイメージ(画像:SkyDrive)

「クルマなのか、それとも航空機なのか」――。

次の移動手段として注目される「空飛ぶクルマ」をめぐり、議論は技術の出来よりも、その呼び名へと傾いている。

 政府は2027年から2028年にも有料で人を乗せる運航を認める方向で調整に入った。まずは東京や大阪の湾岸部での遊覧飛行から始まる見通しだという(『読売新聞』2026年3月27日付)。100年に1度ともいわれる移動の変化が期待される一方、この呼び方に引っかかりを覚える声は少なくない。

「どう見ても小型ヘリコプターだ」
「人が乗れるドローンでしかない」
「道路を走れないものをクルマと呼ぶのはおかしい」

これは、言葉の問題にとどまらない。これまでの移動の見方が、現状とうまく重ならなくなっているのだ。そのずれが、表に出てきたともいえるだろう。

「航空機への抵抗感をやわらげるための呼び名ではないか」
「漢字の『車』ではなくカタカナの『クルマ』とするのは、道路を走る前提を外すためか」

こうした見方も目立つ。この名称が広く使われる背景には、自動車産業が持つ量産の力や部品供給の網を、新たな分野へ引き寄せようとする意図があるだろう。航空機という限られた市場にとどめず、自動車市場の広がりのなかに置くことで、資金や参入を呼び込みたい――そうした狙いが、うっすらと見えてくる。本稿では、この違和感を賛否の対立として処理するのではなく、立場の違いとして捉え直してみたい。

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