「なぜ今さらマニュアル車なのか?」 新車比率2%でも動きが止まらないワケ──“消えゆくはずの技術”に何が起きているのか
日本の新車市場でMT車はわずか2%。しかしトヨタやスバルは既存技術を活かし高価格モデルを投入。EV化進む中、体験価値を前面に出したニッチ戦略で一台あたり利益を最大化している。
高付加価値の戦略

メーカーがMT車に注力する最大の理由は、そこが
・高付加価値
・高単価
を実現できる領域に変わったためだ。かつてMT車は価格を抑える廉価版の色合いが強かった。しかし現代のMT車は、趣味性の高い嗜好品として位置付けられている。
トヨタの「ヤリス Z URBANO」は、先進駐車支援機能を省く一方、最新のディスプレイオーディオや電動パーキングブレーキを標準装備する。都会派モデルとして、価格は230万7800円に設定され、大衆車としては高額だ。付加価値で単価を引き上げる戦略であり、電気モーターやバッテリーといった高額部品を必要としないMT車を、ハイブリッド車と同等の価格帯で提供することで、一台あたりの限界利益を高めている。
スバルの「WRX STI Sport#」のような限定車も、消費者の購買意欲を刺激する。電動化が進むなかで、エンジン車とMTの組み合わせは希少性が高く、売却時の価格が下がりにくい。供給が極めて限られた市場では、メーカーは無駄な価格競争を避け、高い利益率を確保できる。
中古車市場での相場の高さは、新車価格の正当性を支え、ユーザーにとっても実質的な保有コストを抑える利点となるのだ。