「EVだけでは戦えない」テスラ、投資額200億ドルの猛追――BYDとの競争激化、技術革新で逆転は可能か?

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EV成長の象徴だったテスラに減速の影が差す。2025年の納車は163万台と前年比9%減、売上高も948億ドルにとどまった。一方でイーロン・マスクは200億ドル規模をAIとロボットへ投じる。車の会社から知能企業へ――巨額投資の行方が次の評価を左右する。

AI企業評価と揺らぐブランド

テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏(画像:AFP=時事)
テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏(画像:AFP=時事)

 テスラの株価は、将来の成長を織り込んだ高い水準を保っている。市場は同社を自動車メーカーとしてだけでなく、AIの基盤を持つ企業として評価している。

 ただ、この株価は次世代技術の完成を前提に成り立っている面が強い。開発が遅れれば、そのまま資産価値の急落につながりかねない。いま起きているのは、利益率の低下が続く製造業の評価から、高い利益が期待されるソフトウェア事業へ、評価の軸が移りつつある過程でもある。

 マスク氏個人の言動も、企業の姿に影を落としている。過激な発言や労使を巡る対立が続き、ブランドへの見方は揺れている。

 かつてテスラを支持してきた

・環境意識の高い層
・リベラルな顧客

の一部が距離を置き始めているという指摘もある。CEOの人格と企業イメージが強く結びついている点は、強い推進力を生む半面、経営にとって不確実性にもなる。

 こうした危うさと発信力が重なり、「イーロン・マスク劇場」と呼ばれる状況を生んできた。投資家を引きつける要素でもあったが、足元では実利を重んじる投資家から厳しい視線も向けられている。

 テスラはいま、販売の回復よりも、企業としての存在理由を書き換えることに力を注いでいる。EV販売への依存から離れるように、AIやロボティクスへ重心を移す大きな賭けに出た。

 短期では、2025年に納車台数が9%減った停滞からどう抜け出すかが課題になる。販売の立て直しと財務の安定が欠かせない。一方で長い目で見れば、技術をどれだけ早く実用化できるかが行方を左右する。

 ロボタクシーやオプティマスが、期待通りの利益を生む事業へ育つのか。それとも構想の段階にとどまるのか。ここがわかれ道になる。

 かつて移動の姿を変えたテスラは、いま自らの中身を大きく入れ替えようとしている。次の一手は、成長の勢いを取り戻す取り組みにとどまらない。同社が自動車メーカーから、AIを扱う巨大企業へ歩みを進められるのか。その行方を左右する局面に入っている。

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