「鉄道×農業」10年目の審判――なぜ「JR九州」以外は“本業”になれないのか?

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2009年の農地法改正以降、JR九州やJR東日本が沿線農地に参入。高齢化で経営体は2015年の約138万から2025年には83万に減るなか、鉄道会社は土地管理力と流通網を武器に、沿線価値維持と地域経済の「堤防」として農業に取り組む。

沿線価値と農業の関係

鉄道会社による農業参入の意義。
鉄道会社による農業参入の意義。

 この農業構造が今後も維持されるとは限らない。燃料や肥料の高騰、災害による不作などで高齢農家の引退が進めば、JAなどが運営する法人だけでは農地を支えきれなくなる可能性がある。各地で離農が一斉に進めば、生産活動は急速に縮小するだろう。郊外の人口減や不動産価格の下落と重なれば、農地の荒廃は食料生産の問題を超え、地域全体のリスクへと発展する。

 荒れた土地が広がれば、景観は損なわれ、害獣の発生も増える。住環境が悪化すれば鉄道利用者の減少や沿線地価の下落を招き、鉄道会社の経営基盤を直接揺さぶることになる。その際、農業を維持することは、地域経済の急速な縮小を食い止め、沿線価値の低下を防ぐ堤防としての役割を果たす。現在の農業事業は、将来の危機に備えて土地管理の能力を手元に確保するための準備といえる。

 郊外経済と農業が同時に行き詰まった場合、蓄積した知見を大規模運営へ即座に転換できるかが重要だ。鉄道会社が農業にどれだけ深く関わり、現場の運営力を積み上げてきたか。その差が、長期的に沿線のブランド力と収益性を守り抜けるかどうかの境目になる。

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