「鉄道×農業」10年目の審判――なぜ「JR九州」以外は“本業”になれないのか?

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2009年の農地法改正以降、JR九州やJR東日本が沿線農地に参入。高齢化で経営体は2015年の約138万から2025年には83万に減るなか、鉄道会社は土地管理力と流通網を武器に、沿線価値維持と地域経済の「堤防」として農業に取り組む。

参入形態の比較

植物工場内での野菜のLED栽培イメージ(画像:写真AC)
植物工場内での野菜のLED栽培イメージ(画像:写真AC)

 鉄道会社のなかで、最も本格的に農業へ踏み込んでいるのはJR九州である。九州各地に複数の自社農場を展開し、野菜や卵を生産しながら直売まで手がける。

 経営面積は約100haに達し、日本の法人経営体としても大規模に分類される。同社は観光列車などのブランド資源と自社生産の食材を結びつけ、地域全体の価値をグループ内で完結させる垂直統合を進めている。

 一方、JR東日本グループは酒米の生産や、施設型のトマト・レタス栽培に取り組む。駅ナカ販売やグループ流通網と連動した6次産業化も行い、農業は独立事業ではなく、新幹線輸送や店舗網の稼働率を高める物流コンテンツとして活用されている。

 ただし、こうした先行事例が業界全体に広がっているとはいい難い。首都圏の私鉄を含む他社の取り組みは、実証実験や高付加価値型の小規模事業が中心にとどまる。鉄道会社が持つ経営資源を考えれば、参入から10年近く経過した現在でも、農業分野での関与は限定的である。

 収益性の高い不動産事業と比べれば、農業は資本の回転が遅く、会社全体の利益を押し上げる規模に育つには長い時間が必要だ。こうした事情が、事業拡大の停滞につながっている。

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