「EV逆転」SUVブームを飲み込む? 燃費向上は“焼け石に水”なのか――大型車・ライトトラック電動化で8億2000万トン削減の可能性

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米国での小型車の電動化でもライフサイクル排出量は内燃機関車の14%にとどまり、大型SUVやライトトラックの電動化が達成する排出削減は全体の4分の3。BEVは単なる環境装置ではなく、資源循環と経済成長を両立させる新たな産業戦略である。

車両大型化の影響

EV充電イメージ(画像:Pexels)
EV充電イメージ(画像:Pexels)

 バッテリー式電気自動車(BEV)は、走行時に排出ガスを出さないため「ゼロエミッション」と呼ばれる。しかし、車両の製造や廃棄、さらには充電電力の生産まで含めると、完全に排出ゼロではない現実がある。このまま普及を進めても、本当に問題はないのだろうか。思わぬ落とし穴が潜んでいる可能性もある。

 米国では運輸部門が年間の温室効果ガス排出量の約30%を占める。そのなかでも小型車(LDV)の占める割合が最も大きい。1975年に企業平均燃費基準(CAFE)が導入されて以来、燃費の改善により排出量は数十年にわたり減少してきた。しかしこの進歩は、車両の大型化と出力増によって相殺されつつある。1975年の典型的な小型車は137馬力のセダンだったが、2024年には267馬力の大型スポーツタイプ多目的車(SUV)が主流となった。

 技術革新によって得られた効率の余剰は、環境負荷の低減ではなく、より高い利益率を期待できる大型車や高出力車へと振り向けられてきた。こうしたメーカーの戦略が、排出削減の効果を霧散させている。

 内燃機関の燃費がどれほど改善されても、市場が大型車を求め、メーカーがそれに応える限り、輸送部門の脱炭素化は停滞する。BEVの導入を急ぐ前に、この肥大化する市場原理に目を向ける必要があるのだ。

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