「機内から29時間出られません」 世界最長空路が突きつける“移動”の極限――あなたの体は耐えられるか?

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上海~ブエノスアイレスを最大29時間・約2万kmで結ぶ世界最長の直行便が始動した。乗り継ぎを減らし市場を近づける一方、燃料、法規、人体負担という現実も突きつける。空の距離短縮は、経済と技術の次の段階を映す。

直行便とノンストップ便

ブエノスアイレス(画像:Pexels)
ブエノスアイレス(画像:Pexels)

 中国東方航空の上海~ブエノスアイレス線は、途中でテクニカルストップを挟む。そのためノンストップ便ではない。ただ、便名も機材も変わらないことから、扱いは直行便となる。言葉の違いは小さく見えて、運航の考え方を分ける点でもある。

 ノンストップ便の最長クラスとしてよく挙がるのは、シンガポール航空のシンガポール~ニューヨーク線だ。所要時間は約18時間40分、飛行距離は約1万5000km。計測の仕方で差は出るが、長距離時代を象徴する路線である。

 背景には機体の進歩がある。エアバスA350-900ULRのような超長距離型機が登場し、燃費の改善や空気抵抗の低減、複合材の活用、エンジン性能の向上が積み重なった。飛べる距離は着実に伸びてきた。

 2005年11月には、ボーイング777-200LRが香港~ロンドン間を通常とは逆の東回りで飛び、22時間42分、約2万1600kmのデモ飛行を行っている。あれから20年。長距離輸送の水準は大きく引き上げられた。

 今後を見据えると、カンタス航空が「プロジェクト・サンライズ」として、シドニー~ニューヨーク間とシドニー~ロンドン間のノンストップ運航を計画している。機材はエアバスA350-1000ULR。20時間を超える連続飛行を視野に入れる。超長距離は、まだ伸びる余地を残している。

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