「ラブホ密会騒動」の裏で何が起きたのか? 群馬のローカル鉄道が仕掛けた“全国初”のチャレンジ――なぜ車両にICカードを?
バス用機器を鉄道に使った全国初の事例

2026年1月15日、上毛電鉄の式典では、小川市長のスキャンダルに触れることなく、式典の内容と意義を伝えたメディアがあった。日本経済新聞である。
前橋市と群馬県桐生市を結ぶ上毛電鉄は、この日、全線で交通系ICカードの導入を開始した。JR東日本の地域連携カード「nolbe(ノルベ)」に対応し、「Suica」なども利用できる。無人駅では維持費用を抑えるため改札にICカード読み取り機を設置せず、鉄道車両にバス用の読み取り機を搭載した。
路面電車ではなく鉄道車両にバス型機器を採用するのは全国初で、乗降時には車両内の機器にタッチする。一方、中央前橋駅や西桐生駅など有人駅では改札に従来どおりのICカード読み取り機が置かれている(『日本経済新聞』上毛電鉄が交通系IC利用開始 全国初、鉄道車両にバス型読み取り機)。
ここで注目すべきは、無人駅や無人時間帯の有人駅での運用方法だ。有人駅では乗車時・降車時ともに改札機にタッチする。しかし無人駅では、先頭車両の3番目ドアから乗車し、車両内に設置された入場機器にカードを認識させる。
降車時は運賃箱の機器を利用する。路線バスと同じ機器を鉄道に転用しているため、利用者にとって操作はやや複雑になる。だが、この仕組みは国土交通省の日本版MaaS推進・支援事業にも採択され、沿線地域や自治体から大きな期待を集めている。
バス型機器の導入は、鉄道維持に関する従来の常識を覆す動きだ。鉄道業界には、高額な専用設備を導入することが安全の条件であるかのような風潮があり、結果としてメーカー主導の高コスト市場を助長してきた側面がある。
上毛電鉄は量産品であるバス用機器を転用し、実利を優先する判断を示した。専用品という制約をあえて放棄し、汎用品を採用することで、業界に横たわる過剰投資の論理に一石を投じた形だ。
確かに、乗降方法の複雑さは残る。しかし沿線の交通利便性の向上と、路線存続のための現実的な選択として、この試みは注目に値する。