「生産ラインを丸裸にする」日産も挑む“突発停止ゼロ”への執念――年間17万時間の損失を消し去る「AI予知保全」の威力とは
AIを活用した予知保全や学習型システムが自動車生産ラインの停止時間を年間17万時間削減。効率化と安全性向上を両立させつつ、ブラックボックス化の課題も浮上している。
導入コストと維持負担

予知保全システムは、運用や保守の効率を高め、設備の安全性も改善する。しかし、その導入にはAIやIoTを組み込んだ検知機器や、データを保管するサーバやクラウドへの投資が欠かせない。多くのシステムは、IoTで取得した温度や振動の情報をリアルタイムで解析し、異常の兆候を見つけ出す仕組みになっている。
一方で、ネットワークに接続される性質上、サイバー攻撃のリスクも高まる。サプライヤーやアウトソーシング先を経由した侵入も想定され、セキュリティ対策やシステム維持費、人件費は継続的に必要となる。加えて、現状では製作者がクライアントに対し、誤判定の理由を十分に説明できないケースも多い。
こうした課題に対応するには、ガイドラインや法律の整備を含め、インフラ全体を見直すことが求められる。信頼性を確保するためには、AIの思考プロセスや計測データを常に可視化できる環境を整える必要がある。ログを追跡可能にすることで、ブラックボックス化を抑えつつ、使用者が判断する余地を残せる。
近年では、下した判断の根拠を明示する説明可能なAI(XAI)の研究と実用化が進み、システムベンダーも登場している。機械学習の精度が高まるにつれ、評価軸は増え、思考プロセスも複雑化する。そうした中で、ブラックボックスの解消は今後さらに重要性を増すだろう。