「生産ラインを丸裸にする」日産も挑む“突発停止ゼロ”への執念――年間17万時間の損失を消し去る「AI予知保全」の威力とは
AIを活用した予知保全や学習型システムが自動車生産ラインの停止時間を年間17万時間削減。効率化と安全性向上を両立させつつ、ブラックボックス化の課題も浮上している。
責任所在の不透明性

AIの信頼性が問題になる背景には、精度だけではなく、誤判定によるトラブルの責任の所在がはっきりしない点もある。トラブルが起きれば、利用者やプログラムを作った企業が責任を負うことが求められる。しかし、AIの判断は根拠が不明な場合があり、学習した情報自体が誤っていたり偏っていたりすることもあるため、責任の所在を証明するのは簡単ではない。
こうした状況を踏まえ、諸外国ではAI規制が進んでおり、多くの法律はAIの信頼性を前提に組まれている。日本でも2025年9月1日に「AI法」が施行され、リスクへの対応に関する規定が盛り込まれた。機械学習は企業の利益最大化やエネルギー供給の安定化、輸送コストの削減といった判断を導く力を持つため、信頼性や社会的受容性の向上は、AIシステムの活用拡大に直結する。
実際、日本の大手自動車メーカーでは、AIを活用した予知保全システムを生産ラインに導入し、年間で約17万1000時間のダウンタイム削減を達成したと報告されている。最大で85%の削減も可能と見込まれている。予測に応じて設備パーツの交換時期を前倒ししたり、まだ使える部品を確認したりすることで、最悪の事態を避けつつ、設備全体の効率的なメンテナンス計画を立てやすくなる。機械学習による運用・保守の効率化は、生産ラインの停止を防ぐだけでなく、コスト削減を通じて消費者への還元にもつながる。