9000億円「超巨大計画」が白紙に! 名古屋“ガリバー私鉄”に課された十字架、官民連携で再始動の行方とは
兆単位再開発の負担

では、名鉄とはどのような企業か――。
名鉄は大手私鉄16社のうちの1社で、中京圏では唯一の大手私鉄である。首都圏には9社、近畿圏には5社あるが、名古屋には近鉄の路線もあるものの、近鉄は基本的に大阪の企業である。
日本民営鉄道協会の「大手民鉄鉄道事業データブック2025」によると、名鉄の営業キロ数は444kmで、近鉄の501km、東武の463kmに次ぐ
「第3位」
である。4位以下は200km未満であり、上位3社が突出していることから、名鉄は近鉄・東武と並び「三大私鉄」と呼ばれてきた。
名鉄は中京圏唯一の大手私鉄であると同時に、営業キロ数の大きさから地域独占型の“ガリバー私鉄”でもあった。しかし、ローカル線も多く抱えており、キロ数の大きさが売上の大きさに比例しているわけではない。ローカル線の赤字は幹線の黒字で長らく支えられてきたが、近年は岐阜市内線や末端区間の廃止が進んでいる。
かつて競争上優位に立っていた国鉄との区間でも、分割民営化後のJR東海が巻き返したことで優位性を失った。五摂家の凋落は、名鉄の地位の低下と重なるものである。
地域独占型のガリバー私鉄である名鉄は、今後も名古屋を中心とする中京圏から逃れることはできない。
12月12日の名古屋駅地区再開発計画見直し発表で影が薄くなったが、10日前の12月2日には、かつての五摂家を中心とする名古屋拠点企業が「NAGOYA都心会議」を正式に発足させた。今後は名古屋都心部の魅力向上と
「選ばれる都市」
の実現に向けた取り組みを本格的に進める。会長は名古屋鉄道社長の高崎裕樹氏である。
名古屋駅地区再開発計画は、地下の名鉄名古屋駅の営業を止めずに2線から4線に拡大・整備する一方、地上の建物を解体し、新たな建物を建設する難工事である。名鉄の自前資産とはいえ、当初計画の8880億円で収まらない場合は兆単位の投資が必要となる。
計画の見通しの甘さや決断の遅さに対する批判は理解できる。しかし、人口1000万人規模の先進工業国の首都で、象徴的な一画を対象とする兆単位の再開発は、名鉄1社だけで担うには荷が重い。名鉄の自助努力に加え、
「官民一体」
の体制で計画を再検討することが求められるだろう。