30年前に消えた「長いクルマ」に再び脚光? 米国「燃費規制緩和」がもたらす市場構造の変化を考える
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トランプ政権が解き放った「選択肢」という幻想

ロイター通信によると、ダフィー米運輸長官はCNBCのインタビューで、燃費規制の緩和案により自動車メーカーがステーションワゴンの生産を再開できる可能性があると述べた。長官は「消費者に選択肢を取り戻す。ミニバンも素晴らしいが、ステーションワゴンも格好いいかもしれない」とも語った。
ステーションワゴンは、セダンをベースに車体後部を延長し、広い荷室を備えたボディタイプである。低い全高と低重心を特徴とし、走行安定性や燃費性能に優れる一方、日常使いから長距離移動まで対応できる実用性を併せ持つ。かつては
「ファミリーカーの定番」
として広く普及していた。
米運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、2022年から2031年モデルの燃費要件を大幅に緩和する方針を示した。従来は2031年までに1ガロン当たり50.4マイル(1リットル21.4km)の平均燃費達成が求められていたが、提案では34.5マイルに引き下げる。
厳しい燃費規制はこれまでステーションワゴンの生産に大きな影響を与え、市場構造を硬直化させた。デトロイトスリー(フォード、ゼネラルモーターズ、ステランティス)は1990年代半ばに大型ステーションワゴンの生産を終了し、スポーツタイプ多目的車(SUV)中心のラインナップに移行した。日本でもミニバンやSUVが台頭し、ステーションワゴンは市場から姿を消した。欧州でも縮小傾向が続く。
NHTSAの試算では、規制緩和により車両の初期費用は
「1台あたり930ドル(約15万円)
削減される。一方で2050年までに燃料消費は約1000億ガロン(約3785億リットル)増加し、米国民の追加燃料費は最大1850億ドル(約2兆8700億円)に上る可能性がある。CO2排出量も
「約5%増加」
すると見込まれる。価格低下と環境負荷増加の関係性は、消費者選択やメーカー戦略に影響を与える要素となる。
さらに燃費規制緩和は、生産コストの低減にとどまらず、メーカーの製品戦略やラインナップ構成にも影響する可能性がある。ブランドイメージやセグメント戦略に応じて、ステーションワゴンを再投入する判断が変わるだろう。
消費者の選好や価値観の変化も、復活の可否を左右する重要な要素となる。今後、規制緩和を契機とした議論が、自動車市場の構造や消費者行動の見直しにも波及することが予想される。