日本のタクシー「海外で大勝負」――新興国法人向け「高級ハイヤー戦争」が始まるのか?
新興国での日系企業向けハイヤー市場が拡大している。交通事故多発地域で安全性を担保し、紙領収書やマナー教育済みドライバーを提供できる企業は希少だ。第一交通はインドで400人体制に拡大し、法人需要を取り込む動きを強化している。
BtoC集中の副作用

新興国では、日系企業の需要を満たせるハイヤーが少ない。そこには紙の領収書の問題もある。ライドシェアサービスと、それに対抗するタクシー会社の競争は、キャッシュレス化とペーパーレス化を強く推し進めた。領収書はアプリでスマホに表示されるだけとなり、一般利用者にとっては利便性が高まった。
しかし、法人向けハイヤーでは状況が異なる。紙の領収書を確実に発行できることが求められる。これがないと法人利用には不向きだ。新興国では平均年齢が低く、ビジネスチャンスは常にDX化と結び付く傾向が強い。そのため、紙の領収書にこだわるサービスは軽視されるか、無視されてしまうこともある。
「最近のタクシー会社は紙の領収書の発行をしぶるようになった」
と語るのは、筆者(上原寛、フリーライター)が接した新興国に駐在する日本人の声だ。この点は日本人駐在員にとっての隠れた負担となっている。ライドシェアブームとそれに触発されたタクシー会社の動きは、BtoCへの対応に集中している。その結果、BtoB分野が手薄になり、新興国で日本のハイヤー会社が活躍する余地が生まれているのだ。