日本のタクシー「海外で大勝負」――新興国法人向け「高級ハイヤー戦争」が始まるのか?

キーワード :
,
新興国での日系企業向けハイヤー市場が拡大している。交通事故多発地域で安全性を担保し、紙領収書やマナー教育済みドライバーを提供できる企業は希少だ。第一交通はインドで400人体制に拡大し、法人需要を取り込む動きを強化している。

高度人材としてのドライバー

第一交通産業グループのウェブサイト(画像:第一交通産業グループ)
第一交通産業グループのウェブサイト(画像:第一交通産業グループ)

 日系企業が、ハイヤーを絶対不可欠のサービスと考える理由は明白である。インド、ベトナム、タイ、インドネシアなどに進出する現地法人に、本国から役員が視察に訪れる場合、ハイヤーの出番は必須となる。一般のタクシーやライドシェアでは代用できないのだ。重要なのは、現地の交通事情に精通し、

「日本の商習慣に基づいたマナー教育」

を受けたドライバーが車両に乗ることである。こうしたドライバーは高度人材であり、常時一定数を確保できる現地タクシー会社は極めて希少である。このため、日本のハイヤー会社が海外展開を行う余地が生まれる。

 前述の記事によれば、第一交通産業は今後、日本への派遣を通じたドライバー育成にも乗り出すという。日本で働くトラックドライバーをインドで育成し、日本の運送会社に派遣する計画だ。帰国後は現地法人に雇用され、ハイヤードライバーとして活躍する見込みである。

 この取り組みは壮大である。日本語と日本の商習慣に完全対応したインド人ドライバーを、日本での実習を経て育成する計画だからだ。数年単位の時間がかかる見通しである。一方で、こうした取り組みが必要であることは、現状の海外市場における「質のよいハイヤー」が非常に限られていることを示している。

全てのコメントを見る