日本のタクシー「海外で大勝負」――新興国法人向け「高級ハイヤー戦争」が始まるのか?

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新興国での日系企業向けハイヤー市場が拡大している。交通事故多発地域で安全性を担保し、紙領収書やマナー教育済みドライバーを提供できる企業は希少だ。第一交通はインドで400人体制に拡大し、法人需要を取り込む動きを強化している。

法人需要を捉える送迎サービス

インド(画像:Pexels)
インド(画像:Pexels)

 2025年10月20日、日本経済新聞は第一交通産業(福岡県北九州市)のインドでの事業拡大について報じた。タクシー大手の同社は、インドでハイヤー事業を拡大する。ドライバーを現在の2割増の400人体制に強化し、2026年以降には営業エリアを南部だけでなく北部や中西部にも広げる計画だ。現地では交通事故が多く、安全に配慮した送迎サービスとして法人需要を取り込む。加えて、今後は日本への派遣を通じたドライバー育成にも取り組む。

 同社は、日本のタクシー・ハイヤー企業のなかでも海外進出に積極的だ。インドのバンガロール市内に事業拠点を置いたのは2017年である。そこから8年を経て、南部のみならず北部にも営業区域を広げる背景には、現地で十分なハイヤーサービスが整っていないという事情がある。同紙には

「現地は交通事故が多く、安心できる送迎サービスとして法人需要を捉えている」

とあるが、いい換えれば、日系企業の需要を満たせる現地系ハイヤーサービスが不足しているか、ほぼ存在しないということだ。

 ここ10年で起きたライドシェアブームの影に隠れた領域がある。スマホアプリで任意の場所に車を手配できるライドシェアは、人々の移動を大きく変えた。タクシーより料金が安く、ドライバーの名前や評価が可視化されているため、従来型タクシーより安全性が高い。事前料金確定制もあり、ボッタクリやメーター操作とも無縁である。

 さらに、一般車両で人を運ぶことが可能であれば、荷物の輸送も問題ない。そのため、新興国を中心に展開するライドシェアは多角化を進めている。軽輸送や買い物代行、フードデリバリー、電子処方箋を使った医薬品輸送、なかにはマッサージ師の派遣まで行うサービスもある。これを受け、タクシー会社は営業免許のない車両がタクシーと同等のオペレーションを行うことに反発しつつ、自前の配車アプリを開発するなど対抗策を打ち出した。

 ライドシェアとタクシーが変革の波に直面する一方で、ハイヤーサービスはその現象とは距離を置いていた。現地のタクシー会社がライドシェアへの対抗策に注力した結果、法人向けハイヤーサービスの充実が後回しになった側面もある。

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