GM「脱中国」加速――地政学リスクの修羅場? 北米で進むサプライチェーン再編、市場維持の二律背反とは

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GMが北米サプライチェーンから中国を段階的に排除へ。世界EV市場の6割を占める中国事業は維持しつつ、北米では輸送費増や二重構造化コストと向き合う選択的デカップリングの行方が、2030年代の自動車産業地図を左右する。

選択的デカップリングの戦略

GM(画像:Pexels)
GM(画像:Pexels)

 GMの脱中国加速は、政治リスク回避にとどまらず、北米サプライチェーンの再定義や産業構造の転換を迫る動きと評価される。一方で、中国依存の素材や部品の代替は容易でなく、短期的にはコスト上昇やサプライチェーンの複雑化を招く可能性がある。

 完全な脱中国も、完全な中国依存継続も現実的ではないことから、多くの専門家は企業ごとに段階的・選択的なデカップリングを構築することが現実的な戦略と考えている。北米市場での脱中国は、政治・地政学リスクの回避や政策優遇の獲得という合理性を持つ一方で、輸送費や調達コストの上昇、二重構造化コストといった現実的リスクも伴う。

 GMの脱中国は北米市場にとどまらず、欧州系や日系メーカー、さらにはサプライヤーチェーン全体にも影響を及ぼす可能性がある。注目すべきは、脱中国によるコスト上昇を最終製品価格にどこまで転嫁できるか、中国事業を切り離さずに維持できるかという点であり、政治情勢や政策変化に応じて柔軟にサプライチェーンを調整できる能力も重要な要素となる。

 さらに、脱中国の戦略には定性的側面も存在する。長年のサプライヤー関係や取引慣行、現場の組織文化、ブランド戦略や顧客基盤の維持など、単純なコスト計算では測れない要素が再編の成否に影響する。GMは北米でリスクを分散しつつ、中国市場での収益・ブランド価値を維持するという二地域のバランスをとる必要がある。

 結論として、GMの脱中国は短期的には北米市場でのリスク分散策として理解できるが、同時に二重構造化コストや組織・現場の心理的負担など、長期的な不確実性も抱える戦略である。自動車産業全体が政治の変化や地政学リスクに翻弄される時代を象徴する動きといえ、GMの決断が賢明なリスク回避なのか、それとも過度な政治迎合による競争力低下につながるのかは、早ければ2027年ごろに現実として示されるだろう。

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