GM「脱中国」加速――地政学リスクの修羅場? 北米で進むサプライチェーン再編、市場維持の二律背反とは
筆者の意見

GMのサプライチェーン脱中国の動きは、一見するとトランプ政権による米中関係悪化への短期対応に見える。しかし実際には、政治主導のサプライチェーン再設計であり、2030年代の自動車産業地図を左右する地政学的な転換点だといえる。
レアアースやレアメタル、半導体、コネクタ類など、中国依存度が高い素材や部材を他地域のサプライチェーンに置き換えることは容易ではない。現状の産業集積や代替品の評価期間を考慮すると、GMが定めた最短2年足らずでの完了は困難だ。
北米でサプライチェーンを急速に分散させれば、輸送費の上乗せで部品コストが上昇し、競争力低下のリスクが顕在化する。特に電動車の電池や素材の調達は価格弾性が高く、米国内生産だけでは付加価値率が急落し、収益を圧迫する可能性がある。
近い将来、フォードやステランティスも地政学リスクを念頭に脱中国に追随せざるを得ないだろう。結果として北米市場全体が高コスト構造化し、最終的に車両価格の上昇として消費者に跳ね返る懸念がある。
日系メーカーも例外ではない。米国での車両生産に必要な部材を中国から調達できなくなるリスクが現実味を帯びつつある。サプライチェーン再編による部品価格の上昇は、日系メーカーの米国事業に直接的な影響を与える。
GMの選択的脱中国は、政治リスクの回避には一定の効果がある。しかしグローバル販売台数の約3割を占める中国事業は、北米に次ぐ第二の柱だ。加えて中国は、グローバルEV市場の約6割を占める世界最大のEV市場でもある。GMは中国での収益確保を重視せざるを得ず、今後も中国事業を維持するしか選択肢はない。
結果としてGMは、北米では脱中国、中国ではプレゼンス維持という二律背反の矛盾を抱えることになる。さらに米国サプライチェーンは、二重化コストによって長期的に競争力を削ぐ可能性もある。