「洋上火災」は逃げ場なし! 煙&炎が船内を覆す密閉構造――誰が、どう命を守るのか?

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海上の船は密閉空間で火災が急拡大するリスクを抱える。港外では陸上の消防支援も届かず、消火装置、海水供給システム、粉末・ガス・泡消火の多層防御と乗員訓練、定期検査の連携が命を守る最前線となっている。

船の消火装置

船(画像:写真AC)
船(画像:写真AC)

 船にはどのような消火装置が備わっているのか。火元や設備が多様な船だからこそ、場所や用途に応じた消火方法が用意されている。

 最も基本的な消火方法は水を使うものである。家庭にある自動スプリンクラーのように、船でも火元や火災拡大の可能性がある場所の天井にスプリンクラーが設置されている。火災探知機と連動して自動で放水する仕組みだ。

 さらに船内の至る場所には消火栓が配置されている。これは乗組員が現場に駆けつけて消火できるようにするためである。ホースの届く距離から逆算して消火栓を設置しており、船上のあらゆる場所に対応できるようになっている。そのため、乗組員は定期的に訓練を行っている。消火に使う水は船の淡水ではなく海水だ。火災が発生すると専用のポンプが作動し、消火配管から海水を吹き出す仕組みになっている。

 粉末消火剤を使う方法もある。陸上でよく見かける消火器と同じ原理である。粉末の冷却効果や窒息効果によって火を消すもので、普通火災だけでなく、油火災や電気火災にも対応できる。消火訓練で消化器から粉が吹き出す様子を目にしたことがある人も多いだろう。

 船にはガスを使った消火装置も多く導入されている。主に二酸化炭素などの不活性ガスを使用し、ガスが充満した空間では火が燃えにくくなる性質を利用している。この方法の利点は乾式であることだ。水や泡とは異なり、機械室や電気室など、水がかかると機器に障害が出る場所で特に有効である。また、燃える原因を直接断つことができるため、最新の新燃料による火災対策としても採用されることが多い。

 船内には燃料が大量に保管されており、これが火災の原因になることがある。水をかけると油が広がるだけだが、泡なら油の表面を覆い酸素を遮断できる。これにより火を消すことが可能だ。このため主に機関室では、大量の泡消火液を噴出するシステムが装備されている。

 ガス消火の難点はガスが目に見えないことである。二酸化炭素が充満した空間に人が誤って入れば窒息するリスクがある。そのため、泡消火をメインの消火方法とする船も多い。ただし泡が作動すると電子機器が濡れて故障する場合もある。どの消火方法を採用するかは、船が積んでいる燃料や造船所、船主の方針によって大きく左右される。

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