テスラ「モデルY廉価版」は成功する? 価格は約607万円~、単なる「安物化」か「普及の突破口」か? 高級モデルとの比較で読み解く
テスラが607万円の廉価版モデルYを投入した。航続距離517kmを確保しつつ装備を簡素化。マスクCEOの2006年プランに基づく「高級 → 普及」の価格階層戦略の第3段階で、EV普及と社会接続を同時に狙う布石である。
筆者への反論

廉価化には以下の懸念がともなう。
・ブランド価値の低下
・利益率の悪化
テスラの営業利益率は2022年の17%から2024年には7%台まで低下(Reuters推計)しており、廉価モデルでは原価上昇を吸収しきれず、キャッシュフローの悪化が懸念される。量で稼ぐ構造は、過去のトヨタやGMの過剰生産時代を想起させ、機能削減にも限界がある。
テスラは性能・先進性・自動運転でブランドを築いてきた。装備削減やコストカットは「安物テスラ」という印象を与え、従来の高価格帯顧客の購入意欲を削ぐリスクがある。また、マスクCEOの華やかさと廉価版の矛盾もブランドイメージに影響しうる。
米国では急速充電網の偏在が依然として課題で、郊外地域の約40%が急速充電設備を持たない(EPA 2024)。廉価EVが増加しても、充電待ちや遠距離移動の制約により利便性が低下し、普及の阻害要因になりうる。さらに、リチウムやニッケルなどのバッテリー原料は地政学リスクに直結し、価格変動や供給遅延が生産計画や車両価格に影響する可能性がある。
これらを踏まえると、廉価化は経済的・社会的リスクをともない、必ずしも持続可能なEV普及戦略とは言えない。ブランド信頼維持、利益構造の安定、充電インフラ整備、供給リスク管理を同時に進める必要があり、価格低下だけでは成功は保証されない。