テスラ「モデルY廉価版」は成功する? 価格は約607万円~、単なる「安物化」か「普及の突破口」か? 高級モデルとの比較で読み解く

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テスラが607万円の廉価版モデルYを投入した。航続距離517kmを確保しつつ装備を簡素化。マスクCEOの2006年プランに基づく「高級 → 普及」の価格階層戦略の第3段階で、EV普及と社会接続を同時に狙う布石である。

筆者の意見

テスラ(画像:Pexels)
テスラ(画像:Pexels)

 近年、リチウムイオン電池の価格低下と生産ノウハウの蓄積により、EVは高嶺の花から「生活の足」へと転換している。

・原材料価格の下落
・量産による製造能力の向上
・競争激化
・技術革新による効率性の向上

が進んでいる。

 生産規模の拡大は価格を押し下げる大きな要因である。BNEFによると、リチウムイオン電池パックの平均価格は2013年に1kWhあたり732ドルであった。しかし2023年には139ドルまで低下している。約10年で約80%の減少だ。

 テスラはギガファクトリーを活用し、セル一体型構造の4680セルや材料調達の垂直統合で、さらなるコスト圧縮を進めている。イーロン・マスクCEOのマスタープランはあまり知られていないかもしれないが、「高級 → 普及」の価格階層戦略を

「2006年」

の計画で明言している。スポーツカーを作り、その売上で手頃な価格のクルマを作り、さらにその売上でより手頃なクルマを作る。このサイクルによりEVを普及させる戦略であり、今回の廉価版モデルYはその第3段階に位置する。

 中国のBYDは2万ドル台でEVを量産し、ASEAN諸国で急速にシェアを拡大している。バッテリーパックへのセル充填技術の改善や、DXを活用した効率的な製造プロセスもコスト低減に貢献している。さらにシリコンやリチウム金属アノード、固体電解質などの次世代技術も、今後の価格引き下げ要因になりうる。

 中国のように研究開発から量産までの期間が短く、廉価なEVを投入する勢力を踏まえると、米国・欧州が高価格帯に留まるなかでテスラが

「中価格帯に進出する意義」

は大きい。世界のEV市場は変化が激しく、先手を打つことが競争力確保につながる。高級ブランドの信頼を維持しつつ普及層にレンジを広げることは、グローバルEV競争の防衛線である。今、普及拡大に着手しなければ市場で取り残されるリスクがある。

 米国では民主党政権下でグリーン政策が推進され、EVシフトの動きが支えられてきた。インフレ抑制法(IRA法)により再生可能エネルギー投資やEV普及が支援されている。一方で共和党政権下では、EV政策にネガティブな側面がある。二大政党制では政策が反転するリスクが企業に存在する。補助金に頼らず売れるEVへの構造転換は不可欠であり、廉価版の投入は

「政策変動へのリスクヘッジ」

としても合理的である。

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