日産・ホンダ「アリア/ZDX」生産停止の衝撃――米国EV鈍化・共和党政策が突きつける「米国依存」からの脱却
アジア市場への軸足

では、日本メーカーの戦略的選択肢にはどのようなものがあるのか。マーケティングでは4Pのフレームワークが用いられる。
・製品(Product)
・価格(Price)
・流通や販売場所(Place)
・プロモーション(Promotion)
の四つである。
地域戦略の再編も現実的な選択肢となる。従来のEV投資コストや国際的なSDGs対応を考慮すれば、Placeを見直すことが重要である。ブルームバーグNEFの調査リポート「電気自動車の長期見通し」(2025年6月)によると、リチウムイオン電池の
・価格低下
・低価格モデルの生産拡大
が進み、今後の世界EV販売台数の約3分の2を中国が占めると予測されている。欧州は17%、米国は7%にとどまる見込みだ。
さらに、アジアを中心とした新興国市場も、中国メーカーのけん引で急速に成長するとされている。この状況を踏まえれば、EV販売をアジア圏にシフトし、集中投資する戦略が現実的である。EVに前向きな政策環境と成長市場への資源配分が、市場拡大には有利だ。日本メーカーにとって、EVの生産・販売リソースを再配分するタイミングに差し掛かっているといえる。
米国市場での潜行戦略(表立って攻めず、目立たずに進める戦略)も、日本メーカーの選択肢として挙げられる。あえて提案するのは
「政権交代を見据えたR&D継続」
である。米国は共和党と民主党の二大政党制であり、歴史的に民主党政権の復帰は十分に想定できる。EV政策が再びポジティブになる可能性もあるわけだ。政権交代に即応できる生産・開発体制を維持することは、米国市場では重要な戦略となる。ただし、この戦略はあくまで潜行戦略である。アジア圏でのEV推進を踏まえ、前述の地域集中戦略と組み合わせるかどうかが意思決定のポイントになる。
Productの観点では、米国向けに
「車両仕様」
を吟味する戦略もある。現状の米国市場や自動車利用の特性を考慮し、水素エンジンなどの代替駆動方式を検討することもあり得る。Promotionの面では、共和党が重視する国内雇用や部品供給の維持に寄与する方針を示すことも有効だ。米国経済への貢献をアピールし、市場環境の安定化を図る狙いである。
国際ベースモデルの開発も戦略のひとつである。Productの観点から、世界市場向けの共通EVモデルを開発する方法だ。基本車両を用意し、国や地域ごとのオプションで現地需要に対応させる。自動車研究の世界では一般的な考え方だが、日本メーカーには柔軟性が不足している。
ベースカーを増産することでPrice面での競争力も高まる。さらにマーケティング強化も必要だ。日本メーカーはPR戦略が弱く、生活者との接点作りにも課題を抱えている。依然として「自社の技術で作りたい車を作る」という発想が主流である。