「EV版ラム」開発中止の衝撃――高価格帯EV戦略の終焉か? レンジエクステンダーへの転換が示す、米国ピックアップ市場「現実解」の行方

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米自動車大手ステランティスが「Ram 1500 REV」の開発中止を決定。EVピックアップ市場の構造的限界と高価格戦略の失敗が浮き彫りとなり、航続距離690マイルのレンジエクステンダー版で新たな成長軸を模索する。

市場閉塞打破の新戦略

マツダ・MX-30 ROTARY-EV(画像:マツダ)
マツダ・MX-30 ROTARY-EV(画像:マツダ)

 レンジエクステンダーは、閉塞したEVピックアップ市場を打破する解決策としてラムに採用された。ガソリンエンジンは発電用補助電源に限定され、駆動はモーター主体で行う。約30年前からエンジン代替として検討され、1990年代にはシトロエンが一部車種に導入していた。

 レンジエクステンダーの最大のメリットは航続距離の飛躍的向上だ。ラムの場合、モーター単独で140マイル(約224km)だが、容量27ガロン(約102リッター)のガソリン発電により、航続距離は690マイル(約1104km)まで延びる。長距離利用や積載時でも性能は維持され、けん引能力も高い。一般的なEVピックアップは最大1万2000ポンド(約5400kg)までだが、ラムは1万4000ポンド(約6300kg)をけん引可能だ。

 さらに急速充電インフラに依存せず、電欠リスクを回避できる。都市部でも地方でも使い勝手が向上し、バッテリー容量を抑えられることで車両価格を相対的に下げられる点もメリットである。

 一方で課題も大きい。エンジン搭載のため厳密にはゼロエミッションに寄与せず、温室効果ガス削減効果は限定的となる。構造が複雑になり、メンテナンスも煩雑となる上、車両コスト上昇の懸念もある。

 国内ではマツダがロータリーエンジンを発電専用に搭載した「MX-30」を販売したが、市場に定着せず発売から4年でモデル終了となった。またレンジエクステンダーに用いられるエンジン仕様は日産のe-Powerに近く、この技術を応用すれば日産や他の日本メーカーも参入の余地がある。

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