EV大衆化に挑む「フォード」 T型以来の革新モデル発表、3万ドル戦略で市場制覇なるか?
地政学リスク迫る電池供給網

2027年発売予定の新型ミッドサイズピックアップは、価格を約3万ドル(約444万円)に設定する。米国では依然としてピックアップが販売台数上位を占め、人気は根強い。低価格帯には、アマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏が支援するEVスタートアップ「Slate Auto」が参入予定だ。2026年末からふたり乗り電動ピックアップの最廉価モデルを2万ドル(約296万円)で販売する計画である。フォードが価格で優位に立てれば、大衆層への浸透は加速する可能性が高い。
当面の主戦場は米国市場だが、欧州投入も視野に入れる。排出規制の強化やEV補助金が追い風になる。一方、日本市場では再参入の可能性はあるが、充電インフラ不足、需要低迷、販売網未整備といった課題が残る。
消費者が求めるのは価格だけではない。航続距離、充電時間、サービスネットワークの整備など、性能や利便性の向上も欠かせない。生産開始までに技術を成熟させ、サプライチェーンの安定や地政学リスクへの対応も必要である。
フォードは次世代フルサイズ電動ピックアップとフルサイズEVバン「Eトランジット」の発売を2028年に延期する見通しだ。これまで大型モデル中心のEV戦略を進めてきたが、販売不振で黒字化は遠のき、原価低減の余地は限界に達した。利益確保との均衡が崩れた格好だ。
こうした状況を受け、2024年8月の戦略発表で低価格EV開発のための「スカンクワークス」発足を公表した。新プラットフォームによる設計革新で実用性と信頼を確立できるかが焦点となる。
一方、CATLのライセンスを用いたLFPバッテリー製造では、中国商務部が生産技術の国外持ち出しに政府許可を必要とする方針を示した。米中関係や関税政策と絡み、地政学リスクに発展する可能性がある。また、リン酸原料価格も中国の輸出制限などで変動が予想される。
EV市場を巡る法規制や補助金制度は政治情勢に左右されやすく、長期的な不確実性要因となる。外部環境の変化を吸収し、柔軟に事業計画を運営できるかが試されている。