EV大衆化に挑む「フォード」 T型以来の革新モデル発表、3万ドル戦略で市場制覇なるか?
米フォードは総額50億ドルを投じ、3万ドル級の低価格EV開発に着手する。新プラットフォームと生産革新でコスト削減を狙い、20世紀T型以来の大衆化に挑むが、中国勢との価格競争や充電インフラ整備など課題も山積する。
日本再参入に立ちはだかる市場壁

低価格EVが市場拡大に寄与した例は過去にもある。2010(平成22)年に販売開始された日産「リーフ」は376万円から、2016年のシボレー「ボルト」は約2万7000ドル(約400万円)で登場した。いずれも安価な価格設定で購買層を獲得し、その後の改良で市場を広げた。
フォードは当初、発売後1年以内に黒字化の見通しが立たないEVは投入しない方針だった。今回の新戦略で初年度黒字化を狙うには、新プラットフォームの共通化によるスケールメリットがカギとなる。拡張性と柔軟性を備えた新基盤により、商用車を含む多車種展開が可能になる。法人向けには燃料費削減や整備負担軽減といったライフサイクルコスト面での訴求力がある。走行性能や積載効率、室内空間で差別化できれば、大衆向けブランドの再評価につながる可能性がある。
フォードは中国資本の江鈴汽車(JMC)と長年提携し、EVやエンジン車の商用モデルを輸出してきた。新プラットフォームの世界展開では、江淮汽車(JAC)との共同開発によるシナジーも見込める。
2025年7月には欧州傘下ディーラー向けに新モデル投入を示唆したと複数の欧州メディアが報じた。詳細は明らかでないが、欧州の市場特性に合わせた商品戦略が展開される見通しだ。
日本市場への再参入の可能性も残る。フォードは2016年に市場の閉鎖性と収益性の低下を理由に撤退した。販売網や消費者嗜好といった障壁は依然大きいが、トランプ政権が日本の自動車市場開放を要求しており、この動きに乗じる可能性もある。
再参入には販売網の再構築、ディーラー教育、充電インフラ拡充が不可欠だ。さらに政府のEV補助金や軽EV市場の存在が戦略成否を左右する。