日本車は「値上げ」で生き残れるのか? 自動車関税2.7兆円負担増が突きつける、米国価格戦略の正念場
米国が日本製自動車の関税を27.5%から15%に引き下げる合意は、不透明感が漂う中で2025年9月中旬に実施見込みだ。7社合計で約2兆7000億円に及ぶ関税負担は、営業利益を約3割圧迫する可能性が高い。ブランド価値維持に成功した高級ブランドの価格戦略を参考にしつつ、日本車は米国市場での価格転嫁と収益性の狭間で難しい舵取りを迫られている。
値上げとブランド価値の境界線

シャネルやルイ・ヴィトン、ディオールといった高級ブランドは、ここ数年の度重なる値上げで利益を拡大させてきた。
スイス金融大手UBSのアナリスト分析によると、2019年以降の4年間で高級品業界の売上増加の半分は値上げが原因であり、そのうち3分の1は2016~2023年に実施された価格改定によるものだという。
シャネルの代表作「キルティング・フラップ・バッグ」の価格は2015年から2024年にかけて3倍以上に上昇し、「レディ・ディオール」やルイ・ヴィトンの「キーポル」も2倍以上値上がりした。
しかし、経済的な圧力や値上げ疲れから、消費者の購買意欲は低下し、2024年は約5000万人の顧客を失ったと推計されている。業績回復の兆しが乏しいなかで、相互関税によるさらなる値上げは非常に厳しい状況だ。
仏ケリング傘下のグッチは2025年上半期決算で、売上高が前年同期比25%減の30億ユーロ(約5160億円)となり、不振が続く。一方、ルイ・ヴィトンやディオールを傘下に持つLVMHの2025年上半期売上高は減収減益だが、減収幅は4%にとどまった。
多くの高級ブランドの明暗を分けたのは
・価格決定力
・品質/創造性
の整合性だ。エルメスやルイ・ヴィトンは高級ブランドとしての地位が確立され、値上げに消費者が追随した。一方、グッチのような流行追求型ブランドは一定のブランドイメージが定着せず、値上げがブランド価値を損なうリスクとなった。
このことから、市場で値上げが受け入れられるかどうかは、ブランド価値の分かれ目となっている。