なぜプリウスは「無難な国民車」を捨てたのか? 洗練の先に消えた安心感の正体、SUV時代の宿命なのか
1997年に登場したプリウスは「無難で間違いない車」として国民的地位を築いた。だが2023年モデルでは大胆な変貌を遂げ、若年層の感性に照準を移した。日本カー・オブ・ザ・イヤー、グッドデザイン金賞の評価の裏で、「普通」を選ぶ自由が市場から消えつつある現実が浮かび上がる。
「無難な一台」の終焉

主張が強すぎず、気負わずに乗れて信頼性も高い――そんな「無難で間違いない車」が、いま市場から姿を消しつつある。例えば2023年に登場した新型プリウス。クーペのような低く構えたフォルムと鋭い造形は、多くのメディアから高い評価を得た。実際、2023年次の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しており、動的性能の高さとスタイリッシュなモノフォルムへの変貌が賞賛されている。
だが、その洗練された姿に、先代までの面影を見出せず、
「もはやプリウスではない」
と感じた中高年層も少なくなかったはずだ。なぜそう感じるのか――。それは、プリウスがこれまで、保守的な層が「とりあえず選んでおけば間違いない」と信頼を寄せる車だったからにほかならない。