広島で話題の「運賃格差」問題──実はインバウンド対策のヒントかもしれない
広島電鉄が2024年7月に導入した新決済サービス「MOBIRY DAYS」は、ICOCA利用者に整理券取得や車内チャージ不可といった不便を強いる一方、宮島線では最大90円の運賃差が生じるなど地域交通の複雑化を浮き彫りにする。約40億円の設備更新費用削減を狙う一方で、多様な利用者ニーズに応えきれず、観光地交通の新たな課題となっている。
ICOCAとMOBIRY DAYSの運賃格差
ICOCAの整理券問題についての記事や動画は多いが、ICOCAとMOBIRY DAYSの運賃差についてはあまり報じられていない。広島地区は宮島や原爆ドームといった観光地を抱えており、交通系電子マネーへの対応が不可欠だ。広島電鉄がMOBIRY DAYSを導入する際、最大の課題となったのは、旅行客が多く区間ごとに運賃が異なっていた宮島線である。
広島電鉄はPASPY廃止前の2025年2月1日に運賃改定を実施し、市内線と宮島線の運賃を一律240円に統一した。これによりICOCA利用者は整理券が不要となり、降車時に乗務員がいる出口でカードをタッチするだけで支払いが完了するようになった。これで宮島線のICOCA整理券問題は解決したように見える。
しかし、日常的に短区間を利用する地元客にとっては、突然の値上げは負担となった。そこで考案されたのがMOBIRY DAYS運賃だ。広島電鉄の公式サイトには「電車全線均一運賃 大人240円、小児120円」と大きく記載されているが、その下の小さな文字でMOBIRY DAYS運賃も案内されている。
MOBIRY DAYSの運賃表を見ると、最低運賃は150円だ。ICOCAで支払うと一律240円だが、MOBIRY DAYS利用者は150円となり、最大で90円の差が生じている。さらにMOBIRY DAYS利用者は全線乗り通しても220円となり、定率割引が適用される。
MOBIRY DAYS利用者への優遇措置といえるが、裏運賃とも解釈できる。わざわざMOBIRY DAYSのアプリをダウンロードし、クレジットカードとひもづける旅行者が広島でどれだけいるのか疑問だ。多くの旅行客は高いほうの運賃を支払うことになる。