クルマが変わる! 「完全電子化ブレーキ」25年量産化で何が起きる? 安全性、コスト、設計自由度、未来を占う

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ボッシュが開発中の「ブレーキバイワイヤ」は、3300kmに及ぶ走行試験に成功し、軽量化や設計自由度拡大など多くの利点を提供する。2025年には市場投入を予定し、業界の注目を集める一方、安全性や信頼性の確保が最大の課題となっている。

エンジンルーム効率化と車室空間拡大

ブレーキ部品(画像:ギフ加藤製作所)
ブレーキ部品(画像:ギフ加藤製作所)

 ブレーキバイワイヤと聞くと、

「単にブレーキを電子制御に置き換えるだけ」

と受け取られがちだ。しかし実際には、車内スペースの拡大やコストの削減、車両の軽量化といった多くのメリットが期待されている。

 バイワイヤ技術とは、本来機械的に接続されていたワイヤーやペダルを電子システムに置き換えることで、設計や取り回しの自由度を大きく向上させるものだ。なかでもブレーキバイワイヤは、単なる電子化にとどまらず、車両構造そのものに大きな変化をもたらす可能性がある。

 代表的な例が、ブレーキマスターシリンダーの廃止による影響だ。この部品は運転席の前方、エンジンルーム内に配置されており、ブレーキペダルと直結して油圧を増幅させる大型の円筒形ユニットである。ブレーキバイワイヤではこのマスターシリンダー(ブレーキペダルの力を油圧に変換し、ブレーキキャリパーに伝える部品)が不要となるため、エンジンルームのスペースを縮小し、そのぶん車室空間を拡張できる可能性が生まれる。

 特に電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)など、動力源の小型化が進む車種では、マスターシリンダーがエンジンルームのレイアウト最適化を妨げる要因となっていた。この制約がなくなることで、電動車の設計自由度はさらに高まると見られている。

 さらに、グローバル展開する車種では右ハンドル仕様と左ハンドル仕様でマスターシリンダーの配置を切り替える必要があった。ブレーキバイワイヤによりこの違いを吸収できれば、設計や製造の効率化も期待できる。

 操作面でも利点は大きい。ブレーキペダルの踏み込み量が物理的な制約に左右されなくなることで、軽い踏み込みでも正確な制動が可能になる。体格に関係なく最適なブレーキ操作が実現できるというわけだ。

 加えて、部品の簡素化やシステムのコンパクト化が進めば、車両全体のコスト削減にもつながる。ブレーキバイワイヤは単なる技術革新にとどまらず、車両設計・製造・ユーザー体験のすべてに広がる変革をもたらす可能性を秘めている。

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