「赤ランプのまま座ってる」 中央線グリーン車「無賃乗車」トラブル! 罰則強化では根本解決にならないワケ 利用者心理と制度設計の摩擦を考える
2025年3月15日、JR中央線快速および青梅線にグリーン車が導入され、快適性向上を目指す一方で、「無賃グリーン乗車」の問題が浮上。利用者心理と制度設計のズレが、制度への信頼を揺るがしている。罰則強化だけでは根本解決にはならず、柔軟な制度設計が求められる今、快適な移動空間の未来をどう築くべきか、議論が進んでいる。
支払いシステムと現実のズレ

JR東日本のグリーン車では、Suica等を使って事前に「Suicaグリーン券」を購入し、座席上部の読取機にタッチすることで認証が完了する。認証後はランプが赤から緑に変わる仕組みだ。だが、
・券売機の使い方を知らない人
・モバイルSuicaに慣れていない人
・単純に「タッチし忘れる」人
もいる。さらに、Suica残高が不足していて購入できず、そのまま着席してしまうケースもあるという。技術的なハードルは高くないが、それ以上に問題なのは、利用者が制度全体を
「なんとなく理解しないまま」
使い始めてしまう状況だ。グリーンアテンダントによる巡回は、すべての列車・時間帯において十分に行われているわけではない。特に短距離区間ではアテンダントが車両を回りきれないこともあり、結果として巡回がなければ乗り切れるという打算が生まれる。ここで生まれるのは、
「本当は払いたいが、来なかったから払わなかった」
という逃げ道である。鉄道事業者が罰則を前面に出さないなかで、その“ゆらぎ”が制度の境界線を曖昧にしてしまっている。多くの無賃乗車者は、明確にタダ乗りしてやろうと考えているわけではない。
「短い区間だから許されるだろう」
「空いてる席に座って何が悪い」
「自分以外もみんな払ってないように見える」
という心理が働き、自分の行動を正当化してしまう。制度が形骸化すればするほど、「従うこと自体が損」に思えてくる。こうした心理的構造は、制度的な矛盾に触れたときに誰にでも起こりうるものだ。