日産「崖っぷち」からの大逆転なるか? 800億円赤字、工場閉鎖…「技術の日産」再興でスバル化戦略? e-Powerの未来どうなる
生産縮小と市場選択が迫られる現実

日産はターンアラウンド戦略の一環として、グローバル生産能力の削減と3工場の閉鎖を発表した。世界的な需要低迷と競争環境の変化を受けて、日産は生産能力を500万台から400万台に縮小する方針を示している。すでに中国で50万台の削減が行われ、タイの工場(年産37万台)は2025年第1四半期に閉鎖される見込みだ。
さらに、アルゼンチン工場も閉鎖される可能性が高い。現地メディアは、ピックアップ「フロンティア」の生産中止やメキシコへの生産移転を報じており、アルゼンチン工場閉鎖の現実味が増している。また、メルセデスベンツと共同出資するメキシコのコンパス工場では、インフィニティQX55の生産が年内で終了予定で、閉鎖の可能性も浮上している。
タイとアルゼンチンの工場閉鎖によって、グローバル生産能力は400万台に達する見通しだ。このため、もうひとつ閉鎖される工場は、エンジンなどを生産する部品工場である可能性が高い。具体的には、米国のデカード工場が挙げられる。同工場は2025年1月に希望退職の募集や減産を実施しており、閉鎖が避けられない状況となっている。
また、4000億円のコスト削減を達成するためには、「選択と集中」が不可欠であり、「インフィニティ」ブランドの廃止も検討されるべきだろう。インフィニティは1989年に米国で設立され、トヨタ「レクサス」に対抗してきたが、現在では米国市場での販売が不振で、1台当たりのインセンティブ(値引き)が7000ドル(約105万円)を超えるなど、業界でも異常な水準にある。このような状況ではブランド価値の低下が避けられず、廃止することで効率的なコスト削減が可能となる。
日産は、中国と北米市場で事業縮小を迫られる一方で、日本と欧州市場での販売強化が求められる。競争が激化する新興市場から撤退し、収益性の高い市場にリソースをシフトすることが今後のカギとなる。再生を果たすために日産が注力すべき領域として、
・軽自動車
・電気自動車(EV)
・プラグインハイブリッド車(PHV)
が挙げられる。今後投入される新型車には、軽自動車や大型ミニバン、PHV、次世代リーフ、コンパクトEVなどが含まれており、中国市場では新エネルギー車(NEV)の導入も視野に入れている。テスラやBYDなどの競合が台頭するなか、日産がどのようにEV市場で巻き返しを図るかが、「シン・技術の日産」の実現に向けた大きなポイントとなる。