損害額は数億円超! 海上事故の強い味方「海上保険」の知られざる世界! 古代からサイバーまで、世界貿易を守る進化の軌跡とは

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海運業界は世界貿易を支える重要な基盤だが、近年、予測不可能なリスクが増加している。天候不順や海賊行為に加え、サイバー攻撃による損害も深刻化。特に2017年にはMaerskがランサムウェア攻撃で数億ドルの損失を被り、サイバー保険の導入が進むなか、リスク管理手法の進化が急務となっている。

海上保険の基本的な役割

コンテナ船(画像:Pexels)
コンテナ船(画像:Pexels)

 海上保険は、主に次の三つの分野に分類される。

●船舶保険
 船舶保険は、船体や機関(エンジンなど)を対象とした保険で、船舶の運航中に発生する事故や故障による損害を補償する。これにより、船舶の修理や交換にかかる費用をカバーする。対象となるリスクは次のとおり。

・座礁、衝突、沈没などの事故
・火災、爆発、天候による損傷
・エンジンや航行装置の故障

●貨物保険
 貨物保険は、輸送中の貨物が損傷または紛失した場合を補償する保険で、貨物所有者にとって貿易の安全性を確保するために重要な役割を果たす。貨物保険は、海外輸送の場合には外航貨物海上保険、国内輸送の場合には内航貨物海上保険に分かれる。

 海外取引においては、世界基準の保証内容が求められる。特に、英国のロイズSG保険証券を基にした1963年版協会貨物約款(ICC)を用いた旧保険証券、1982年改定のロイズMAR保険証券、2009年版協会貨物約款を使用した新保険証券が主要である。近年では、新保険証券が一般的となっている。保険の約款は、担保する内容に応じて以下の種類に分かれる。

・ICC(C):火災、爆発、座礁、沈没などの重大な損害に対応。
・ICC(B):ICC(C)に加えて、地震、噴火、雷、水害、貨物の海投や落下などのリスクを補償。
・ICC(A):ICC(B)に加えて、雨水による濡れ、盗難、抜荷、付着など、あらゆるリスクを包括的にカバー。

また、遠隔地取引においては、商品引き渡し場所や船舶手配、保険手配を事前に決定する必要があり、これを定めるのがインコタームズである。インコタームズでは、貨物のリスク負担や運送・保険手続きなどの費用負担について規定している。代表的な条件は次のとおり。

・FOB条件:貨物が輸出港で船に積まれるまでの費用を輸出者が負担。
・CFR条件:FOB条件に加え、荷揚げまでの運賃も輸出者が負担。
・CIF条件:CFR条件に加えて、荷揚げ運賃や保険費用も輸出者が負担。

●P&I保険
 P&I保険(Protection & Indemnity Insurance)は、船舶保険や貨物保険では補償されない船主の責任をカバーする保険である。船主責任相互保険組合を組織し、船主同士が相互に損害を補償し合う仕組みで運営されている。主な補償範囲は次のとおり。

・船員の負傷や死亡に対する賠償
・港湾施設の損傷による賠償
・環境汚染(油流出など)による賠償責任

さらに、戦争、テロ、ストライキ、暴動などの特殊なリスクに備える戦争・ストライキ保険など、多様なプランが提供されている。

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