ジムニー、N-VAN…ヒット車は「共感」から生まれた? ユーザーの声をカタチにする「自動車文化論」の復活を!燃費・価格目線を今こそ超えないか?
自動車メディアが燃費やコスト、安全性といった実利的な指標に傾倒する中、「文化論」の価値は忘れ去られつつある。しかし、ユーザーの共感が市場を動かす事例は枚挙にいとまがない。スズキ・ジムニーやホンダN-VANが遊び心を重視した設計で長期的な人気を誇るように、実用性だけでは測れない「心地よさ」や「楽しさ」が新たな需要を生み出している。未来のモビリティを考える上で、今こそ「それ、いいね」と共感を起点とした自由な議論が求められているのではないか。
自動運転×共創、モビリティ新潮流
自動運転技術や電動化の進展により、クルマの価値は単なる移動手段から「移動空間」へとシフトしつつある。静かで快適なEVの登場により、移動中に何を体験するかが、これまで以上に重要になってきた。
こうした変化は、自動車文化論に新たな意義をもたらす。「移動しながら映画を楽しめる車」や「日常を離れ、車内で瞑想できる空間」など、移動に付随する体験を議論することで、未来のモビリティ像はより豊かに描かれる。
すでに一部の高級EVでは、シートや照明、オーディオを駆使し、「移動の心地よさ」を追求するモデルが登場している。しかし、こうした提案はあくまでメーカー側の提示に過ぎない。ユーザーの視点から「こんな移動ができたら理想的だ」という議論を積み重ねることで、より多様な価値が生まれるはずだ。
もちろん、共感だけに偏れば議論は表面的なものにとどまる。重要なのは、互いの発想を深掘りし、実現可能な形へと磨き上げる「共創」の精神である。
例えば、「都市部で使いやすい超小型EVがあったら便利だ」というアイデアがあれば、「駐車スペースをどのように確保するか」「バッテリーは着脱式にできるか」といった議論へと発展させることができる。否定から入るのではなく、「それは面白い」という前向きな視点を出発点とすることで、批評も建設的なものとなる。
このプロセスを支えるメディアの役割は、単なる「情報の伝達者」ではなく、「議論の触媒」として機能することにある。ユーザー、メーカー、行政など、多様な立場をつなぎ、「共感をカタチにする場」を提供することこそが、未来のモビリティを切り開くカギとなる。