「すべてを捨ててく Airplane」 中森明菜「北ウイング」は、なぜ40年以上も愛され続けるのか? 日本社会を変えた「移動」と「時間」のメタファーを読み解く

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1984年にリリースされた中森明菜の「北ウイング」は、単なる恋愛ソングにとどまらず、移動を通じて恋愛のダイナミズムを表現した作品だ。飛行機という交通手段を媒介に、空間と時間が交差し、過去との決別や新たな未来への飛翔が描かれる。移動という視点で捉えると、恋愛の不確実性や心情の揺れが巧みに表現されている。

恋愛の移動と未来への飛翔

成田空港から離陸する旅客機(画像:写真AC)
成田空港から離陸する旅客機(画像:写真AC)

「北ウイング」は単なるラブソングではない。その歌詞には「移動」という視点が組み込まれており、飛行機という交通手段を通じて、空間的・時間的な変化が生まれ、それが恋愛の心理と交差する構造となっている。

 地上から空へ、そして再び地上へという視線の変化は、感情の揺れを示している。また、夜間飛行は恋愛の不確実性と時間の再構築を象徴している。このように、「北ウイング」は単なる別れと再会の物語ではなく、移動そのものが恋愛のダイナミズムを表現する装置となっている。

 さらに、この曲が1983年という時代と重なっている点にも注目したい。この時期、日本人にとって海外渡航はより身近になり、移動そのものが「新しい人生」や「再出発」のメタファーとなり得た。恋愛においても、移動の果たす役割は大きくなりつつあったのではないだろうか。

 恋愛とは、しばしば移動の繰り返しである。人は誰かに近づき、時に離れ、それを繰り返す。過去を捨て、新たな未来へと飛び立つとき、私たちは「北ウイング」に立ち、次の物語を待つのかもしれない。

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