「すべてを捨ててく Airplane」 中森明菜「北ウイング」は、なぜ40年以上も愛され続けるのか? 日本社会を変えた「移動」と「時間」のメタファーを読み解く

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1984年にリリースされた中森明菜の「北ウイング」は、単なる恋愛ソングにとどまらず、移動を通じて恋愛のダイナミズムを表現した作品だ。飛行機という交通手段を媒介に、空間と時間が交差し、過去との決別や新たな未来への飛翔が描かれる。移動という視点で捉えると、恋愛の不確実性や心情の揺れが巧みに表現されている。

移動の詩学としての恋愛

中森明菜「北ウイング」(画像:ワーナーミュージック)
中森明菜「北ウイング」(画像:ワーナーミュージック)

 1984(昭和59)年1月1日、中森明菜のシングル「北ウイング」がリリースされた。「北ウイング」は、新東京国際空港(現・成田国際空港)の第1ターミナル北側を指す名称であり、そこから飛び立つ飛行機が楽曲の中心に据えられている。

 しかし、本作は単なる旅情ソングではない。むしろ、移動そのものを恋愛の本質として捉え直す試みともいえる。

 飛行機は「旅立ち」や「別れ」を象徴する交通手段だが、「北ウイング」が描くのはそれだけではない。「愛はミステリー」と繰り返されるフレーズの中に、恋愛の不確実性と、移動によって揺れ動く心情が交差している。

 この楽曲が示唆する「移動としての恋愛」という視点から、「北ウイング」の世界を紐解いていく。

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