トヨタ子会社が下請法違反 「金型保管の強要」はなぜタチが悪いのか? “取引慣行”はもはや許されない時代に
2024年7月5日、公正取引委員会はトヨタ子会社TCDに下請法違反を勧告。金型無償保管を下請け50社に強要、被害総額数千万円。トヨタ以外にもサンデンやニデックなど大企業の同様の違反が相次ぎ、自動車業界の不正が浮き彫りに。金型の長期保管問題が深刻化し、業界全体での改善が求められる。
金型保管は下請けに費用負担を押し付ける悪癖だ

金型の保管については部品発注元と下請けの間で取り決めるものだが、
「下請けが断りにくい状況」
が非常に多く親会社の押し付けが慣習になってしまっている。金型を適切に保管するためにはさまざまな設備が必要となり、まず
「金型をいくつも並べて収められるだけの倉庫」
が必要だ。金型の多くは鉄鋼材料で作られているため、雨風を防げて湿度も低いことが求められる。保管は将来的な部品の再生産を見込んでいるためサビの発生などを極力抑えなくてはならず、定期的なメンテナンスも必要だ。こういった保管に関する費用は部品の発注元が負担を負うべきものだが、実態としては今回発覚した事例だけではないだろう。
前述の資料によると、自動車業界でのおいて金型の保管は発注側ではなく受注側が費用を負担している割合が
「91%」
と非常に高く、いびつな構造が見て取れる。また受注側が費用負担をする理由としても
「取引慣行」
が大きな割合を占めており、下請け企業は元請けの圧力やこれまでの習慣などから金型保管の負担を断りきれない状況が多いことがわかる。トヨタのような大企業でも慣行を押し付ける悪癖から抜け出せていないことが今回明らかになっており、まだまだ隠れている事例は多いだろう。
2023年末以降、自動車業界は認証不正や製品代金を不当に引き下げる下請け業者へのいじめなど、一連の問題にさらされている。今回の金型保管問題も含め、襟を正して通常の企業活動を行ってほしいものだ。