昼間の交通事故を防ぐ! 「デイライト」は日本で義務化されるか? そもそもなぜ基準が二つあるのか

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デイライトの導入が進む日本では、欧州基準との調整によりデイライト義務化の可能性も浮上。特に薄暮時間帯の事故増加に対応するため、視認性向上が重要視されている。

日本におけるデイライト規制

クルマのデイライト(画像:写真AC)
クルマのデイライト(画像:写真AC)

 デイライトとは、昼間に点灯させるクルマのライトことで「昼間走行灯」とも呼ばれている。

 道路運送車両の保安基準の第34条の3によれば、昼間走行灯は

「昼間に自動車の前方にある他の交通からの視認性を向上させる」

ものと定義されている。つまり周囲に自身の存在を伝えて、安全性を高めるための装備である。

 欧州連合(EU)では2011年からデイライトが義務化されているが、日本では2016年10月におこなわれた保安基準の改正でデイライト専用の基準が設けられた。「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第202条の2」では、デイライトの光度が

「1440cd以下」

であることや、灯光の色が白色であることなどが細かく定められている。

 実は、保安基準の改正が行われる前から、日本でも

・デイライトが装備された車両
・後付けでデイライトを付けた車両

は存在していた。また、青色のデイライトがドレスアップとして流行したこともあった。しかし、基準が改定され白色のみに限定されたことにより、事情が変わってしまった。

デイライト基準の二重構造

視認性が高まるデイライト(画像:写真AC)
視認性が高まるデイライト(画像:写真AC)

 実は、保安基準改正後も白色以外のデイライトは存在している。青色のデイライトも基準を満たしていれば、きちんと車検を通過することが可能なのだ。その理由として、デイライトには基準がふたつ存在していることが大きい。厳密にいうともう少し複雑な話なので、整理して説明していこう。

 前述のとおり、デイライトは法改正により保安基準として基準が定められた。光度1440cd以下で白色といった基準だ。この法改正がなされる以前からもデイライトは存在していた。だが、2016年以前は“無法地帯”だったというわけではなく、保安基準の第42条において

「その他の灯火類」

として管理されていたのだ。道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第218条では、その他の灯火類のライトの色は赤以外で、光度が300cd以下などの規定が定められている。つまり、デイライトとしては第202条の2で定め、その他の灯火類は第42条で管理するという体制になったのである。

 デイライトとして認められるのは第202条の2の基準をクリアしたもののみだ。たとえデイライト的な目的で装備したとしても、第202条の2に当てはまらないのであれば、第42条の規定を満たさなければならない。その場合はデイライトではなく、その他の灯火類という扱いになるわけだ。一見

「ダブルスタンダード」

に見えるデイライトの基準だが、きちんと整備されているのである。

装着位置の規定

ライトをつけて走行する自動車(画像:写真AC)
ライトをつけて走行する自動車(画像:写真AC)

 ではここで、デイライトの細かい基準について見てみよう。

 第202条の2によれば、点滅するものは認められていない。さらに

「原動機の操作装置が始動の位置にないとき及び前部霧灯又は前照灯が点灯しているときは、昼間走行灯は自動的に消灯するように取り付けられなければならない」

と定められている。要するに、ヘッドライトやポジションライト、フォグランプなどが点灯しているときは、デイライトは自動的に消灯しなければならないのだ。

 車体への搭載位置も、地上250mm以上1550mm以下、照明間の幅は600mm(車幅が1300mm未満の車両は400mm)以上の間隔が必要だ。また照明部の面積も、25平方cm以上200平方cm以下と定められている。

 デイライトが認められたとはいえ、一般ユーザーがDIYで自由にデイライトをカスタマイズするのは難しいといえる。むしろ、欧州の基準に合わせたことにより、各自動車メーカーがデイライトを取り入れた車両をグローバルに開発できる環境が整った意味合いのほうが強いだろう。

薄暮時間帯の事故対策

薄暮時間帯における死亡事故に係る分析。死亡事故の時間当たりの当事者別件数。昼間・薄暮時間帯(画像:警察庁)
薄暮時間帯における死亡事故に係る分析。死亡事故の時間当たりの当事者別件数。昼間・薄暮時間帯(画像:警察庁)

 日本で大きな変化を迎えたデイライトは、今後どのようになっていくのだろうか。

 欧州の基準との兼ね合いで、日本の基準が変更された経緯を考えると、記憶に新しいのは

「オートライトの義務化」

だ。同じ流れになればデイライトも義務化される可能性は大いにある。しかし、デイライトが義務化されるとしても、オートライトと同じように導入までの準備期間が設けられ、新車販売される車両に限られるだろう。

 デイライトが義務化されクルマが周囲から認識されやすくなることは重要だ。警察庁発行の薄暮時間帯(日の入り時刻の前後1時間)における死亡事故に関わる分析(令和元年~5年)では、薄暮時間帯は昼間と比べて

「自動車対歩行者」

による事故の割合が高いことが報告されている。昼間の21%に対し、薄暮時間帯は

「48%」

に増加しているのだ。夜間も44%の割合を占めるため、ライトによる視認性の重要度が伺える結果となっている。

 近年では、ハイブリッド車の増加や、クルマの性能向上により“静かなクルマ”が増えた。またワイヤレスイヤホンなどの利用で、クルマに気づかない人が街にあふれている。そのため、薄暮時間帯にかかわらず、

「歩行者や自転車からも発見されやすい」

というのはドライバーにとって安心材料といえる。警察庁のウェブサイトにおいても、薄暮時間帯における交通事故防止として、薄暗くなる前から前照灯を意識的に使用するよう促している。

 安全対策に有効な機能がまたひとつ自動車に加えられたと考えると、必要な変化といえるだろう。デイライトが照らすのは、クルマも人も安心して過ごせる安全な景色であってほしいものだ。

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