糾弾か熟考か 自動車メーカーがこぞって「不正」に走る根本理由 交錯する“正義”は糺せるのか?

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今回紹介する『組織不正はいつも正しい』は、組織内の「正しさ」と規制側とのコミュニケーション不足が不正の原因であることを指摘する。

国際基準と不正の背景

中原翔『組織不正はいつも正しい』(画像:光文社)
中原翔『組織不正はいつも正しい』(画像:光文社)

 では、なぜ日本ではこのように測定が難しい方法が採用されていたのだろうか。

 当時、日本では

「JC08モード」

という燃費基準が採用されており、そこで惰行法が採用されていた。このJC08モードは、それまでの「10・15モード」で計測した燃費が実燃費とかけ離れてるとの声を受けて2011(平成23)年に採用された方式であったが、それでも同一車種の場合、米国の燃費基準よりも燃費値がかなりよくなるといわれていた。

 例えば、当時のプリウスの燃費について、米国の基準では24kmほどだったが、JC08モードでは40.8kmになったという。このJC08モードは2018年に「WLTPモード」という国際的な燃費基準に切り替えられている。

 日本は独自の基準を捨て去ることになるわけだが、政府(国交省や経産省)があえて独自の基準にこだわっていた裏には、

「日本車の燃費をよく見せたい」

という考えが存在していたと思われる。ところが、燃費がよく見えるとはいえ、この測定方法は実施が困難で、三菱自動車やスズキは「不正」に走ってしまったのだ。こうして見ると、

・行政側:日本車の燃費をよく見せたいという「正しさ」
・三菱自動車やスズキ:実施困難な測定方法にこだわるよりも海外でも採用されているやり方で燃費を示せばいいという「正しさ」

があったことが見えてくる。

 もちろん、三菱自動車やスズキの行ったことは「不正」なのだが、その背景には規制をかける側と守る側の

「コミュニケーション不足」

があったともいえるのだ。2024年になって発覚したトヨタの不正でも、日本の基準よりも厳しい米国向けの基準でテストを行ったことが含まれていたという。

 本書は、規制をかける側と守る側がそれぞれの「正しさ」にこだわるのではなく、コミュニケーションを通じてよりよい「正しさ」を追求していくべきだということを教えてくれる本である。

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