深夜の「高速バス」でなかなか眠れないとき、あなたは何を考えているのだろうか?

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大阪在住のフリーライターである筆者は、かつて東京との往復に何度も夜行バスを利用した。本稿はそのときに感じたことの一部であり、本質である。

乗客の静寂と緊張感

深夜のSAで休憩する夜行バスのイメージ(画像:写真AC)
深夜のSAで休憩する夜行バスのイメージ(画像:写真AC)

 夜の高速バスは

「特殊な乗り物」

だと思う。例えば、22時半とか23時に梅田を出発して、朝の7時か8時かに東京に着く。その8時間~10時間近くを、ほとんどの乗客は静かに過ごすことになるのだ。

 いや、もしかしたら最近の高級路線のバスであれば、個室のようなシートが用意されていて、そこで思い思いの過ごし方ができたりするのかもしれないが、私がよく乗っていた四列シートのバスは、隣の席にも乗客がいるし、もちろん通路を挟んだ向こうにも人が乗っていて、お互いが常に周囲に対して気遣いをする必要があったのだ。

 たいていの場合、出発してからしばらくすると車内は完全消灯となり、そこからはひたすら安静に過ごすことになる。スマートフォンを操作すればその光が周囲の眠りを妨げるし、イヤホンやヘッドホンで音楽を聴きたければ音漏れにも注意が必要だ。仲間と一緒に乗っている場合なども、当然ながら私語は慎まないといけない。

 途中、数回のトイレ休憩はあるが、基本的にはその状態が到着までずっと続くわけである。ぐっすり眠って起きたらもう目的地……となれば最高なのだが、なかなかそうはいかない。体を十分に伸ばせるわけでもない窮屈な環境で、隣には見知らぬ人が座っていて、慣れない状況に目がさえて眠気が一向にやってこなかったという経験が私には少なからずある。

 暗い車内でただ目を閉じて、できることといえば“考え事”ぐらいしかない。といっても、東京に着いたら何を食べようとか、誰に会おうとか、そういった具体的な考え事はすぐに終わってしまう。むしろ、考えるべきことが何もなくなってからが

「勝負」

だ。

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