「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!

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人口の3割を占め、日本経済を支える約4000万人の高齢者。シルバー社会のまちづくりとモビリティはどうあるべきか。

価値提案できないモビリティ

歩きたくなる街のイメージ。国土交通省「居心地が良く歩きたくなるまちなか」からはじまる都市の再生」より(画像:国土交通省)
歩きたくなる街のイメージ。国土交通省「居心地が良く歩きたくなるまちなか」からはじまる都市の再生」より(画像:国土交通省)

 ドイツで発明された小型内燃機関が、自動車産業として花開いたのは米国である。フォード生産方式により低価格化が進み、疎外されていた労働者が収入を得て消費者となり、月賦販売に後押しされ大衆化した。ゼネラルモーターズの短サイクルなモデルチェンジと宣伝広告が消費を刺激し

「自動車の生産と消費が人生の目的になり、若者は高速道路付きの輝く都市構想の虜」(ジェイン・ジェイコブス、近代都市計画を強く批判した米ノンフィクション作家)

になり、自動車はミドルクラスの生活と都市を一変させた。

 同時に、自動車は都市に功罪をもたらした。馬車の騒音、ゆがんだ道、馬ふんの悪臭から都市住民を解放し、都市は清潔になり、地方の孤立に終止符が打たれ、道路は改良され、娯楽の機会が増えた。

 逆に、徒歩を中心とした多様性のある街区は、自動車用に道幅が拡張・直線化し、一方通行が増え、時差信号で歩行を遮られ、高速道路と地上との二層化が進み、1世帯あたり平均3区画、さらに行く先々で駐車スペースが作られ、街が分散し、自動車が増え、都市が侵食される悪循環を生み出した。

 近年、次世代モビリティとして、

・空飛ぶクルマや海のモビリティなどの「垂直化」
・生成AI搭載による「パートナー化」(ベンツ、フォルクスワーゲンなど)
・ドライブタイムの収益化を狙うエンターテインメントとの「融合」(ソニーなど)

が進む。

 しかし、クルマが空を飛べば騒音、風、社会的な不安が増え、AIは消費者行動のベースとなる情報を変え生産性の向上と格差を生み出し、エンターテインメントは個人の没入体験をもたらす。これらは個人の欲望を満たしているだけで、後期消費社会の

「社会的欲望」

を満たしていない。社会的欲望とは、社会的に認められた個人の欲望であり、他者との関係性における交流や道徳などを含む。

 後期消費社会は、価値で商品やサービスを選ぶ時代である。かつて自動車は、徒歩や馬による移動距離の制約から生活者を解放し、散歩や読書が中心だった地方の週末を一変させた。ロードサイドができて、商業・娯楽施設ができ、観光地化され、都市づくりと一体となって、若者の遊び、ファミリーの週末レジャーができ、生きがいにつながる価値を提供してきた。今のモビリティの提案には、

「人々の生きがいにつながる価値提案」

がない。融合産業の時代、自動車という独立産業から抜け出し都市との融合を考えた新たな発想が必要だ。

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