航空業界の「脱炭素化」が、自動車業界より一歩も二歩も遅れている納得の理由

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自動車業界では脱炭素化への取り組みが進んでいるのに、なぜ航空業界は遅れているのか。

その他の脱炭素化への取り組み

飛行機(画像:写真AC)
飛行機(画像:写真AC)

 代替燃料に加え、航空業界は脱炭素化に向けて取り組んでいる。これは、新技術の導入と、航空管制の高度化を通じたものである。

 新技術の導入には、航空機メーカーが環境性能に優れた新開発エンジンを積極的に導入するよう促すことや、電動化、軽量化、効率化を促進する新たな基準や認証の導入が含まれる。航空管制の高度化には、飛行ルートの短縮による飛行時間の短縮、経済的で天候に適したルートの確立などが含まれる。

 代替燃料の導入への期待が大きいため見過ごされがちだが、脱炭素化もこのような形で取り組まれている。

 航空産業はどのように脱炭素化に取り組めばよいのか。最も重要なのはSAFの生産方法、安定供給、価格安定を確立することだ。自動車のような電動化や水素燃料の利用を採用するハードルは高く、業界はSAFに頼らなければ脱炭素化への取り組みに近づけない。

 国際航空運送協会は、脱炭素化への取り組みをまとめ、使用燃料に占めるSAFの割合を65%程度まで高める必要があるとしている。脱炭素化の取り組みの中核をなすSAFが直面する問題の解決策を見いだすことが重要になる。

 日本では、国内のSAF開発においてSAFの価格をどこまで抑えられるかが大きな課題となっている。すでに開発が進んでいる欧米では、国家が予算を割いて燃料開発をバックアップしており、価格は国産品より高くなる可能性が高い。重要なのは、競争力のある価格設定が実現できるかどうかである。国産SAFの開発に対する国の支援も重要かもしれない。

 SAFが脱炭素化において重要な役割を果たすことは間違いないが、SAFだけでなく他の分野でも脱炭素化を推進することが重要である。空港の荷物車両の電気自動車化、高性能エンジンの開発、適切なルートや上昇・下降タイミングの分析など、地道な取り組みが求められる。

 SAFだけに頼るのではなく、業界全体でできることから着実に脱炭素化を進めていくことが重要である。

 航空機はビジネス、旅行、輸送などさまざまな用途に使用されており、仮にSAFが本格的に導入された場合、現状のままでは航空券の価格が高騰する可能性がある。

 航空会社のコストの1/3を占めるといわれる燃料費。価格を維持するためには、まず燃料価格を据え置くことが必要条件といえる。SAFの生産が安定すれば、次はいかに安くするかが優先課題になる。底値競争にならないことを祈るばかりである。

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